第241話:新しき空への飛翔
世界樹の森を後にし、爽やかな風の吹く大平原へとキャンピングカーを走らせて数日。
僕たちは車内のリビングで、長老から譲り受けた小瓶をテーブルに置いて囲んでいた。
ガラス瓶の中でゆらゆらと七色に発光しているのは、数百年に一度しか手に入らないという『木もれ陽の雫』だ。
「ツムギ、この奇跡のエッセンス、料理に使えそうかい?」
僕が尋ねると、ツムギは目をキラキラと輝かせながら小瓶を見つめた。
「はい! ほんの数滴生地に混ぜるだけで、小麦粉の風味を極限まで引き立て、どんなスイーツも奇跡のようなフワフワ感に仕上げられると思います!」
「ふふ、料理への応用もよいが……ユウよ。この『木もれ陽の雫』は高純度の聖なる自然魔力の結晶じゃ。我が相棒の車に乗せておるオリハルコンフレームと反応させれば、さらなる進化を遂げるぞ」
ソフィアが意味深な笑みを浮かべてコンソールを指さした。
「更なる進化……?」
「マスター。車体のメイン炉にて『木もれ陽の雫』の魔力波長と、オリハルコンの反重力共鳴パルスを同調させるプログラムが完成しました。いつでも移行可能です」
ナビの頼もしい声が響く。
「よし、ナビ! 新形態へ変形だ!」
『了解。可変プロトコル・天空リゾートモード、起動します』
ナビの操作とともに、車体が心地よい重低音を奏で始めた。
オリハルコンで補強された車体側面から、透明感のある綺麗な光を纏った反重力翼が優雅に展開。さらに車体後部と下部から高出力の魔力推進エンジンが出現した。
ガシィィン! と重厚なロック音が鳴ると、キャンピングカーの巨体が重力を無視してふわりと宙へ浮き上がった。
「わあぁぁ……っ! 飛んでます! 車が空へと昇っていきますよ!」
セリスが窓に張り付いて歓声を上げる。
キャンピングカーはぐんぐん高度を上げ、地上の森林や街道が小さくなっていく。
「ひゃっほー! 海を走った次は、雲の上だー!」
「ララも空飛ぶー! パタパタだー!」
ルナとララがリビングのソファで跳ね回り、ポチも嬉しそうに「ワンワンッ!」と吠えた。
厚い雲の層を突き抜けると、そこには見渡す限りの真っ白な雲海と、どこまでも澄み渡る蒼穹の世界が広がっていた。
「すごい……これが雲の上の世界か。風が気持ちいいな」
車体を滑らかに水平飛行へと移行させ、僕は大きく息を吐いた。
七色の金属光沢を放つキャンピングカーは、空飛ぶ飛空艇『スカイシップ形態』となって、雲海を爽快に駆け抜けていくのだった。




