第240話:木漏れ日の下の祝宴
世界樹が本来のみずみずしい緑を取り戻した翌日、広大な森の広場ではエルフたちによる盛大な祝宴が催されていた。
やわらかな木もれ陽がキラキラと降り注ぐ中、ログハウスモードのキャンピングカーの前には長いウッドテーブルが並べられる。
ツムギ特製の焼きたてピザや焼きたて食パン、世界樹果実のフルーツタルト、そしてネットスーパーの冷えた高級ぶどうジュースが振る舞われ、エルフたちの楽しげな笑い声が森中に響き渡っていた。
「世界樹と我らを救ってくださった恩人たる旅人の皆様に、心からの感謝を」
エルフの長老が深々と頭を下げ、七色に発光する小さな細工ガラスの小瓶を僕へと差し出してきた。
中には、木もれ陽を受けて幻想的な光を放つ液体が入っている。
「これは『木もれ陽の雫』――数百年に一度、世界樹が真の活性を果たした時にのみ根元から湧き出る奇跡のハーブエッセンスです。どうぞお受け取りください」
「こんなにも貴重なものを……本当にありがとうございます!」
ツムギが目を輝かせて小瓶を受け取る。これがあればまた新しい至高のパンやスイーツが作れそうだ。
宴が和やかに盛り上がる中、シルフィが少しもじもじと落ち着かない様子で僕の元へ歩み寄ってきた。
「あの……ユウ」
「ん、シルフィ? どうしたの?」
彼女は顔を耳まで真っ赤に染めながら、手にした小さな竹編みのバスケットを強引に押し付けてきた。中には、森の奥で採れたての新鮮な世界樹の果実がぎっしりと詰まっている。
「これ……持って行きなさい。道中でお腹が空いた時の足足しにしなさいな」
「わぁ、ありがとう、シルフィ!」
「ふ、勘違いしないでよね! 昨日食べた美味しいパンの代金として渡すだけなんだから!……でも、また……またいつでも美味しいパンを焼きに来ていいんだからね……っ!」
ツンと背を向けながらも、尖った耳を赤くして弓を握りしめるシルフィの姿に、セリスやルナたちがクスクスと微笑ましい笑い声を漏らす。
「よし、そろそろ出発しようか」
「はい! 最高の旅になりそうですね、ユウさん!」
重厚で静かなエンジン音が響き、ログハウス風のキャンピングカーがゆっくりと発進する。
エルフたちが総出で手を振り、シルフィがいつまでも名残惜しそうに僕たちの車を見送っていた。
木の温もりに包まれたキャンピングカーは、次なる未知の絶景と美味を求めて、爽やかな緑の風と共に新たな地平へと走り抜けていくのだった。




