第237話:世界樹の異変
青空パンカフェが大盛況となり、エルフたちとすっかり打ち解けた翌日のこと。
穏やかで平和だった森の空気が、突如として不気味で禍々しい揺れを見せた。
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!
大地が激しく震動し、空を覆い尽くしていた世界樹の瑞々しい葉が、みるみるうちに茶色く枯れ落ちて舞い散る。
森の澄み切っていた魔力の流れがどす黒く濁り、鳥たちの鳴き声が一瞬で途絶えた。
「な、何事ですか!? 世界樹様の葉が……! 森の魔力が一気に吸い上げられていく!?」
シルフィが青ざめた顔で弓を握りしめ、ガタガタと震える世界樹の大幹を見上げる。
「マスター、世界樹の中枢部分から強力な濁った魔力波長を検出。世界樹の根元および樹上高層部へ向けて、寄生型の魔力吸収反応が急速に拡大中です」
ナビの切迫したアナウンスとともに、車内モニターに世界樹の透過スキャン画像が映し出された。
巨木の最深部、根と幹の接合部分に、漆黒のドロドロとしたツタ状の巨大な植物生命体がへばりつき、世界樹が何千年もかけて蓄えた聖なる魔力をガシガシと貪り食っていた。
「あれは……『寄生魔樹』じゃ!」
ソフィアが珍しく余裕の笑みを消し、表情を激しく険しくする。
「寄生魔樹……太古の昔から世界樹を枯らそうと狙う邪悪な魔植物じゃ。奴は根から栄養を吸い上げるだけでなく、世界樹の幹の内部を喰い荒らしながら登り、最後には幹を食い破って森全体の生命力を完全に枯渇させる悪鬼のような存在じゃ」
「そんな……世界樹様が枯れてしまったら、私たちは……この森の命は完全に滅びてしまいます……!」
シルフィが弓を落としそうになりながら膝をつき、悲痛な声を上げる。
「大丈夫です、シルフィさん! 私たちに任せてください!」
セリスが前に一歩踏み出し、シルフィの震える手を両手で優しく包み込むと力強く頷いた。
「ユウさんのキャンピングカーと私たちの力があれば、必ず世界樹様を救えます! だから絶対に諦めないでください!」
「うむ! 焼きたての美味しいパンと世界の果実ジャムの御礼に、わらわ達が格の違いを見せてやるとするかの!」
ソフィアも身の丈以上の杖を地面へ力強く叩きつける。
「ナビ、キャンピングカーを樹上移動形態へ切り替えろ!」
『了解いたしました。可変プロトコル・ツリーハウスモード、起動します』
世界樹とエルフの森を救うため、僕たちのキャンピングカーは新たな戦闘・移動形態へと覚醒するのだった。




