第229話: オリハルコンの鍛造
蒸気が晴れた制御室の奥で、巨大な防壁扉がゆっくりと左右に開いた。
そこに現れたのは、黄金色の光を静かに放つ、神代のテクノロジーの結晶「超高熱火炉」だった。中央のるつぼには、物質の分子結合すら分解しかねない超高熱の魔力熱源が、まるで太陽の縮図のように渦巻いている。
「これより、オリハルコンの鍛造プロセスを開始します。ユウ、オリハルコン原石を炉へ投入してください」
アニムスの誘導に従い、ユウはキャンピングカーから下ろしたオリハルコンの原石を、魔力アームで炉の内部へと静かに滑り込ませた。
どんな高熱でも決して溶けないと言われる伝説の原石が、るつぼの黄金色の光に包まれた瞬間、ゆっくりと液状へと変化していった。眩いばかりの青金色の液体となって輝きを放つ。
「ナビ、キャンピングカーのフレームデータおよび各パーツの規格設計図を炉の制御システムへ転送してください」
『データ転送、完了しました! アニムス、息を合わせて精密成形を行いますよ!』
「了解しました。成形フィールド、展開!」
アニムスのコマンドとともに、炉から放たれた幾何学的な成形ビームが、溶けたオリハルコンを包み込んだ。空中に浮かび上がった青金色の液体金属が、細かく分割され、極めて複雑なパーツの形状へと姿を変えていく。
キャンピングカーの主要な骨格となるフレーム補強材、そして前方に装備された巨大なドリル、フロントバンパー……。
それらの形を得たオリハルコンが、アニムスの精密な魔力アームによって、キャンピングカーの車体へと吸い込まれるように装着されていった。
金属が噛み合う小気味よい音が室内に響く。
オリハルコンがキャンピングカーのフレームの芯へと完全に融合し、外装の各部にも美しい金属光沢が定着していく。
「すごい……! 車全体が、まるで呼吸しているみたいに光ってる……!」
セリスが感嘆の声を上げた。
完成したRVは、元の実用的なデザインを保ちながらも、陽極酸化されたような不思議な青金色の輝きを放っていた。光の当たり方によって七色に変化するその装甲は、神々しさすら感じさせる。
『マスター! フレーム強度が以前の十倍以上に向上しました。さらにドリルとフロントバンパーの硬度は測定不能レベルです。これでどんな岩盤も、神代の防壁すら紙のように穿てますよ!』
ナビが嬉しそうにデータを読み上げる。
「素晴らしい適合率です」
アニムスの球体ホログラムも、満足そうに青い光をまたたかせた。
伝説の金属は、最強のキャンピングカーの新たな骨肉となったのだ。




