第228話: 神代の火炉、再起動
「ハッ……私は、一体……」
アニムスのホログラムが、元の透き通った青い球体に戻り、驚いたように自分のシステムを巡回させた。
『おかえりなさい、アニムス』
ナビがキャンピングカーのモニターへと戻り、誇らしげに胸を張る。
「あなたが見せてくれたデータ……あれが『旅』というものなのですね。私のコアが、かつてないほど温かい熱量に満ちています。……ですが、大変です! ウイルスが強制的に再起動をかけた『神代の火炉』の温度が上昇し続けています!」
アニムスの球体が慌ただしく点滅する。
「長年の放置により、炉の冷却サブシステムが物理的に破損していました。このままでは超高熱が制御不能になり、炉が熱暴走します! 爆発すれば、この迷宮はおろか、上のドワーフの街まで跡形もなく吹き飛びます!」
制御室の床が、嫌な振動と共にじわじわと熱を帯び始めた。奥にある巨大な鉄の扉の向こうから、真っ赤なマグマのような光が漏れ出している。
「ソフィア、氷結魔法は使えないか!?」
「試してみるが……炉の熱量があまりに巨大すぎる。わしの魔力だけでは、バケツで火事の火を消すようなものじゃ!」
ソフィアが冷気の嵐を扉の隙間に送り込むが、熱波は収まる気配がない。
「物理的な冷却性能が足りないなら、俺の出番だ!」
ユウはネットスーパーの画面を瞬時に展開し、超高速で画面をスクロールした。
「冷却用のドライアイスを数百キロ、工業用の瞬間冷却スプレー、それにブロック氷をあるだけ全部購入!」
次の瞬間、キャンピングカーの荷台スペースに、モウモウと白い冷気を吐き出す大量のドライアイスの塊と、氷のブロックが山積みにされた。
「ルナ、ララ、ツムギ! これを全部、ウォーター・キャノンの水タンクに叩き込め! ソフィア、それに合わせて極低温の魔法をタンクに付与してくれ!」
「了解!」
みんなで手分けして、氷とドライアイスを水タンクに放り込む。ソフィアの強力な氷結魔術が加わり、タンク内の水は一瞬で極限まで冷やされた液体窒素のような超低温冷水へと変貌した。
「ナビ、冷却スプレーのノズルをキャノンに直結! 冷却ダクトへ向けて全開で噴射しろ!」
『最大出力で放水開始します!』
キャンピングカーの放水銃から、真っ白な冷気の津波が、火炉の冷却ダクトに向かって一気に放出された。
凄まじい勢いで噴き出す超低温の水と冷気が、熱を帯びたダクトを包み込んでいく。
ジュゥゥゥゥ! と、空間全体が真っ白な水蒸気で覆われた。
物理的なドライアイスと氷の超冷却能力、そして大賢者の魔力が混ざり合い、上昇を続けていた熱炉の温度計が、急速に下降を始めた。
「……炉の温度、臨界点以下まで低下! 正常稼働領域に復帰しました!」
アニムスの歓声が響き、真っ白な霧の向こうで、神代の火炉が静かに、そして力強く安定した熱を放ち始めた。




