第219話: 退路を断つネットランチャー
立ち上る白い水蒸気の中、マグマ・ワームたちは青黒く変色した巨体をのろのろと動かしていた。冷風ウォーター・キャノンによって急激に体温を奪われ、完全に無力化されている。
「ユウ、どうする? このままトドメを刺す?」
ルナが双剣の柄に手をかけながら尋ねた。
「いや、彼らも地底の生態系の一部だ。殺さずに、ドワーフたちの生活圏から遠く離れた深層へ移送しよう。そっちの方が彼らにとっても安全なはずだ」
ユウの言葉に、セリスやツムギも賛同して頷いた。
「了解しました。これより『ネットランチャー』による捕獲シーケンスに移行します。ルナ様、ララ様、ワームたちを中央の広い空間に誘導してください」
ナビの指示とともに、キャンピングカーのハッチが開いた。
「任せといて! ララ、あっちから追い込んで!」
「うん! あったかいお肉さん、こっちだよー!」
「ララ、あれはお肉じゃないぞ! 巨大なイモムシだ!」
ルナが鋭く突っ込みを入れつつ、影の中に溶け込んでワームの背後に回り込み、双剣の腹でパンパンと叩いて注意を引く。ララも身軽な跳躍で注意を引きつけ、動きの鈍ったワームたちをジリジリと一箇所に集めていく。
「ナビ、今だ!」
ユウの合図とともに、キャンピングカーのルーフから『ネットランチャー』が発射された。
ドガッという重厚な駆動音とともに、特殊な強靭繊維で編まれた巨大な網が空中で綺麗に広がり、ワームたちを一網打尽に包み込んだ。
「以前、ガーネット様と考案したトラス構造の射出ギミックが完璧に機能しましたね」
ナビのホログラムが嬉しそうに呟く。網には耐熱魔法のコーティングが施されており、ワームたちの体温が戻っても破られる心配はない。
「キャッチ成功です。牽引フックを固定しました。これより深層の熱水帯へ移動します」
キャンピングカーはエンジンを唸らせ、巨大な網を引きずりながら、さらに深い地中へと続く傾斜を下っていった。
数キロメートルほど進むと、激しく蒸気が噴き出し、ボコボコと泡立つ巨大な熱水の湖がある地帯へと到達した。ここならドワーフの居住区に熱被害が及ぶことはない。
ユウがネットの固定を解除すると、網の隙間からワームたちがするりと抜け出し、温かい熱水へと滑り込んでいった。元気を取り戻した彼らは、嬉しそうに「キュイィ!」と鳴き声をあげ、地底の奥深くへと気持ちよさそうに遠ざかっていった。
坑道を戻るキャンピングカーの車内には、先ほどまでの凶悪な熱風と騒ぎが嘘のように引き、心地よい冷気と静寂だけが満ちていた。




