第218話: 激突! 冷風ウォーター・キャノン
「ナビ、最深部までの距離と温度は!?」
ユウが振動するハンドルを強く握りしめながら叫んだ。
「前方二百メートル。車外温度はすでに六十五度を計測しています。間もなくマグマ・ワームの密集地帯に到達します」
ナビが青白いホログラムの姿で現れ、警告灯を赤く明滅させながら答えた。
フロントガラスの向こうには、洞窟の壁や天井を蠢く数十匹の巨大な影が見えていた。太さ一メートル、長さ数メートルはある巨大な芋虫のような魔物。全身が溶岩のように赤く発光し、呼吸をするたびに地殻の裂け目から熱波を噴出させている。
「うへえ、見るからに暑苦しそうな光景ね……!」
ルナが窓の外を見て顔をしかめた。
「ユウ、結界を張るわ! ここは私の魔力で熱を遮断する!」
助手席のセリスが両手を掲げると、キャンピングカーの周囲に淡く輝く『黄金の結界』が展開された。ジリジリと車体を焼いていた熱気が一瞬で和らぐ。だが、ワームたちの放つ熱は尋常ではなく、結界を維持するセリスの額には大粒の汗が浮かんでいた。
「奴らの熱源を直接冷却する必要があります。ユウ様、冷却用の水分および冷気を確保してください」
ナビのアドバイスに、ユウはすぐさま頷いた。
「わかった! ネットスーパー、緊急注文!」
ユウは画面を素早くタップし、バルク売りの「板氷」と「砕氷」を数十キログラム単位で大量に発注した。注文完了と同時に、キャンピングカーの収納スペースへうず高く積まれた氷の塊が転がり込んでくる。
「ソフィア、氷を魔力放水タンクへ送り込んで!」
「ふん、重力操作で一瞬じゃな」
ソフィアが片手を振ると、うず高い氷がふわりと宙に浮き上がり、給水タンクの投入口へと次々と吸い込まれていった。タンク内で氷が魔力水流と混ざり合い、冷却温度が急降下していく。
「冷風水流砲――『冷風ウォーター・キャノン』、稼働準備完了です」
ナビがトリガー画面をユウの前に投影した。
「ターゲットロック。いつでもいけます、ユウ様!」
「よし……放水開始!」
ユウが画面のトリガーを強く押し下げると、キャンピングカーの上部に装備された高圧ノズルが唸りを上げた。
放たれたのは、氷点下ギリギリまで冷やされた超低温の魔力水流だ。激しい水しぶきが、高熱のマグマ・ワームたちに容赦なく浴びせかけられる。
「――ジュウウウウウウウウッ!」
凄まじい勢いで白い水蒸気が立ち上り、一瞬にして周囲の視界が真っ白に染まった。
冷水を浴びせられたマグマ・ワームたちは苦しげにのたうち回り、その体から発せられていた不気味な赤い輝きが、急速に冷え固まった溶岩のように黒褐色へと変化していく。熱を奪われ、その動きがみるみるうちに鈍くなっていくのが見えた。
白い濃霧のような蒸気が、静かに洞窟を満たしていった。




