第217話: エアコン全開の避難所
「ルナ、そっちのドワーフさんを運んで! ララは私についてきて!」
「了解!」
「わかったよ!」
セリスの鋭い指示のもと、一行は坑道で倒れていたドワーフたちを次々とキャンピングカーの中へと運び入れた。
ユウが『移動式高級ホテルモード』のボタンを押すと、キャンピングカーは駆動音を立てて拡張し、車内のリビングスペースが広々とした快適な部屋へと変形した。ふかふかのソファーやベッドが出現し、疲弊したドワーフたちが次々と横たえられていく。
エアコンは冷房十八度設定でフル稼働。車外のサウナのような熱波から一歩車内に入るだけで、肌を撫でる極上の冷気が彼らを包み込んだ。
「おおぉ……冷たい……冷たい風が吹いとる……」
「生き返る……ここは天国か、あるいは冷気の精霊の宮殿か……?」
熱中症で意識を失いかけていたドワーフたちが、冷気に包まれて安堵の息を漏らす。
そこへ、ナナがトレイに冷たい麦茶や、ネットスーパーで調達したスポーツドリンクを載せて現れた。
「これをゆっくり飲んでください。失われた水分と塩分を素早く補給するための飲料です」
ナナはてきぱきと動き回り、ドワーフたちに飲み物を手渡していく。さらに、氷嚢や使い捨ての冷感パックを彼らの首筋や脇の下にあてがい、体温を効率的に下げるための看病にあたった。
「そちらの方、急に頭を起こさないでください。まだ血圧が安定していません」
ナビの青白いホログラムが車内を巡回し、ドワーフたちの体温や心拍数のデータを空間に投影して状態を監視していた。
「うおっ、光るお嬢ちゃんが指図しとる……!」と驚くドワーフに、ナビは冷静に「私はホログラムですので物理的な接触はできませんが、皆様の健康管理はお任せください」と微笑む。
「ユウ様、収容した三十五名全員のバイタルが危険域を脱し、安定しつつあります。ですが……」
ナビがディスプレイの一部を赤く点滅させた。
「熱源の元凶であるマグマ・ワームの群れが、さらにこちらのルートへ進軍してきています。このままでは坑道自体が熱で崩落するか、キャンピングカーの冷却限界を超える熱波に包れる恐れがあります」
「そうか……ただ逃げるだけじゃ解決しないな。あいつらをどうにかして押し戻すか、追い払わないと」
ユウはきつく拳を握りしめ、冷気の満ちた車内の窓から、赤く燃え盛る坑道の奥を見つめた。
ドワーフたちの命を救ったキャンピングカーは、地底の熱地獄の中で、今や唯一のオアシスとして静かに佇んでいた。




