第216話: 迫る熱波とマグマ・ワーム
ガーネットとの賑やかな通信を終え、ユウたちはリビングで冷たい麦茶を飲みながら、心地よい疲労感の中で一息ついていた。
そんな中、不意にリビングの天井からピピピと高い警告音が鳴り響いた。
「あれ? なんだか急に暑くなってこなかった?」
ルナが襟元を手でパタパタと仰ぎながら呟いた。
「毛皮が熱を吸って、じりじりするぞ……」
ララも長い耳をぺたんと伏せ、冷たい麦茶のグラスを両手で包み込んで涼を取っている。
「車内のエアコンは正常に作動していますが、外気温の急激な上昇を感知しました。現在の外気温はすでに四十度を突破し、なおも上昇を続けています」
ナビが青白いホログラムの姿で現れ、空間に真っ赤に染まった熱源分布図を表示した。
窓から外を覗くと、先ほどまで暗かった鉱山都市の空気が、陽炎のようにゆらゆらと不気味に揺らめいていた。地底特有のひんやりとした空気は完全に失われ、息苦しいほどの熱風が通りを吹き抜けている。
「た、大変じゃあ! 誰か、冷たい水を……!」
広場の方から、ドワーフの鉱員がふらふらとした足取りで駆け込んできた。
ユウが慌ててキャンピングカーの外へ飛び出し、倒れそうになった彼の体を支える。肌に触れた風は、まるでサウナの中にいるかのように熱かった。
「どうしたんですか!? この異常な暑さは一体……!」
「坑道の奥……最深部の採掘場に、マグマ・ワームの群れが異常繁殖しちまったんだ! 奴らが吐き出す熱気で、主要な坑道が溶岩地帯みたいになっちまって……! 仲間たちが熱にやられて、動けなくなっている!」
「マグマ・ワーム!?」
ユウが問い返すと、後ろから出てきたソフィアが険しい表情で頷いた。
「地底の深部に棲む高熱の魔虫じゃ。普段は溶岩の底に投棄されておるはずだが……何かで暴走しおったな。奴らがまき散らす熱波をまともに喰らえば、頑強なドワーフとてひとたびで水分を奪われ、干からびるぞ」
その言葉を証明するように、通りでは熱中症で倒れるドワーフが続出していた。このままでは、この鉱山都市全体が巨大なオーブンと化してしまう。
「ユウさん、急いで助けましょう! まだ坑道の中に取り残されている人たちがたくさんいます!」
ツムギがエプロンを握りしめ、真剣な表情で訴える。
「よし、キャンピングカーを出そう! この熱波の中なら、エアコンのある僕たちの車が一番安全な避難所になる!」
ユウは鉱員を車内の涼しいリビングへと運び込むと、すぐに運転席に飛び乗った。
「ナビ、最深部への最短ルートをマッピングして! エアコンをフル稼働だ!」
「了解しました。車内環境を冷房十八度設定で維持しつつ、ナビゲーションを開始します」
キャンピングカーはエンジン音を轟かせ、熱風が吹き荒れる暗い坑道へと急行した。ヘッドライトが照らし出す先には、高熱で赤く光る岩肌と、息も絶え絶えに倒れているドワーフたちの姿が見え始めていた。




