第215話: ガーネットとの遠隔連携
「ふぅ、美味しかったし、皆に喜んでもらえてよかったね」
炊き出しの後片付けを終えたツムギが、冷たい麦茶を淹れてリビングのテーブルに置いた。ユウやルナたちもソファーに腰掛け、心地よい疲労感の中で一息ついている。
その傍らで、ソフィアは魔導通信機に魔力を流し込んでいた。
「さて、大地の奥深くは魔力の流れが乱れておるが……余の重力魔法で電波の通り道を歪めてやれば、地上との通信も可能じゃ。……ほれ、繋がったぞ」
ソフィアがパチンと指を鳴らすと、通信機から激しい砂嵐のような雑音のあと、聞き覚えのある快活な少女の声が飛び出してきた。
『――ザー、もしもし!? ユウ! ナビ! 聞こえる!? アタシよ、ガーネットよ!』
「ガーネット! 声がはっきり聞こえるよ。そっちは変わりない?」
ユウがスピーカーに向かって呼びかける。
『変わりないわけないでしょ! そっちが地下大迷宮に潜るって聞いてから、心配で工具を握る手が震えっぱなしなんだから! それで、例のドリル重機モードはどうだった!?』
「バッチリ稼働しましたよ、ガーネット様」
ナビがホログラムの姿で現れ、誇らしげに胸を張る。
「超硬ダイヤモンドを使用した開削ドリルは、地下数百メートルに及ぶ魔鉱石の岩盤を時速十キロメートルという驚異的な速度で粉砕しました。大成功です」
『やったぁ! アタシの設計に狂いはなかったわね! でも……本番はここからよ。もしそこにあるっていうオリハルコンが手に入ったら、どうキャンピングカーを補強するか、もう考えてあるんでしょうね?』
ガーネットの問いかけに、ナビの瞳が青く輝いた。
「もちろんです。オリハルコンは高純度魔力との親和性が極めて高い金属。私は、ドリルの刃先の冷却ジャケットに純結晶をコーティングし、摩擦熱を全て車内のエネルギーに還元する機構を提案します」
『なるほど! 熱回収システムと連動させるわけね! でも、それだと激しい衝撃時の熱膨張率の差で、コーティング膜にマイクロクラックが発生するリスクはない? 流体金属と合金化して柔軟性を持たせた方が良くない?』
「その場合、分子結合の均一性が失われ、回転時のブレがゼロコンマ数ミリ秒発生します。私の計算では、冷却効率を最大化する方が変形リスクを低く抑えられます」
『あはは、言うじゃない! じゃあメインフレームの補強はどう? トラス構造の接合部に魔力伝導パスを通して……』
スピーカーから響くガーネットのマニアックな早口と、それに負けじと論理的な早口で返すナビ。二人の「メカ屋」としての熱いディスカッションが始まると、もはや誰も口を挟む隙はなかった。
「……何というか、すごい熱量だね」
ユウが苦笑いしながら麦茶をすする。
「お姉ちゃんたちの話、全然わからないけど楽しそう!」
ララが尻尾を揺らして二人のホログラムとスピーカーを見比べていた。
「やれやれ、この二人が繋がると、余の魔導無線のバッテリーよりも先に頭がパンクしそうじゃな」
ソフィアが肩をすくめて溜息をついたが、その表情はどこか優しかった。
暗い地下世界にあっても、地上と繋がっている絆が、一行の心を温めていた。




