第214話: 大盛りスタミナ丼とサラダバー
「よーし、みんなで準備しよう!」
ユウの声とともに、キャンピングカーが広場の中央へと移動した。
ツムギが操作パネルをタッチすると、車体側面が大きく跳ね上がり、ピカピカに磨かれたカウンターと、食材を冷やすためのガラスのショーケースが現れた。キャンピングカー『フードトラックモード』の展開だった。
「おおおっ!? なんだあの巨大な鉄の箱は!」
「横っ腹が開いて、中から綺麗な店が出てきたぞ!」
驚くドワーフの鉱員たちを前に、ユウはネットスーパーの画面を操作した。
新鮮なレタスやトマトなどの野菜と、脂ののった極上の豚バラ肉、大量のニンニク、特製の醤油ダレを注文する。
「わあ、みずみずしくて美味しそうな野菜!」
ララが目を輝かせながらレタスを冷たい水で洗い、ルナとセリスがトマトやキャベツを刻んで、ガラスのショーケースに色鮮やかなサラダバーを作り上げていく。ナナも給仕用のトレイを並べ、冷たい水を準備してサポートに回っていた。
「私のセンサーも、非常に強力な香味成分を検出しています。これは皆さんの疲労回復に最適な数値です」
ナビが車外に青白いホログラムの姿で現れ、楽しそうにディスプレイを空中に投影した。ホログラムであるナビは物理的に食事をすることはできないが、こうして分析やサポートで参加するのがお気に入りだった。
ツムギは、醤油、みりん、酒、すりおろしたニンニクと生姜をたっぷり合わせた特製のスタミナダレを大鍋でひと煮立ちさせていた。
「ユウさん、お肉をお願いします!」
「任せて!」
ユウが外に設置した大型の炭火グリルで、厚切りの豚バラ肉を網の上に並べた。
じゅう、と小気味よい音が響き、炭火の上に脂が滴り落ちる。ツムギが刷毛でスタミナダレを肉に塗りつけると、立ち上る煙とともに、食欲をそそるニンニク醤油の香ばしい匂いが広場全体に広がった。
「な、なんだこの匂いは……!?」
「ヨダレが止まらねえ! 炭火とニンニクの匂いか!?」
匂いに引き寄せられたドワーフたちが次々と広場に集まってくる。
ほかほかご飯を丼に盛り、炭火でこんがりと焼いたスタミナ豚肉を敷き詰め、温泉卵を落として青ネギを散らせば「大盛りスタミナ豚丼」の完成だ。
「ドワーフの皆さん、お待たせしました! 炊き出しです、好きなだけ食べてください!」
ツムギが声をかけると、ドワーフたちは我先にと丼を受け取り、サラダバーへと殺到した。
一人の年老いたドワーフが、震える手でトマトとキャベツを口に運ぶ。
「――っ! シャキシャキだ……! 甘くて、冷たくて、体に染み渡る! 何ヶ月ぶりに生の野菜を食べただろうか!」
「こっちの肉も凄えぞ! 柔らかくてジューシーで、このタレと白飯の組み合わせは悪魔的だ!」
彼らは猛烈な勢いで丼をかき込み、生野菜を頬張った。
静まり返っていた地底の広場に、あっという間に熱気と笑顔が戻っていく。
カウンターの奥で、ツムギとユウは嬉しそうに顔を見合わせた。




