第212話: ドリル重機モード、始動!
「きゃっ!」
キャンピングカーの床が大きく揺れ、ルナが慌ててシートにしがみついた。
悪路仕様のキャタピラが激しくスリップし、エンジンから低い唸り声が上がる。フロントガラスの向こうには、発光水晶の青白い光を遮るような、漆黒の岩壁が立ちはだかっていた。
「ダメだ、ここから先は岩盤で塞がれてる」
ユウはギアをニュートラルに戻し、額の汗を拭った。
「ナビ、この岩の厚みは?」
『マスター、前方にあるのは魔導エネルギーを吸って硬化した、超高密度の魔鉱石の岩盤です。通常の掘削機では刃が立ちません。厚さは約五十メートル、その先には広い空間が感知されています』
ホログラムのナビが、立体マップを表示した。
「五十メートルか……。引き返すには深すぎるし、掘り進むしかないな」
「でも、魔鉱石の岩盤となると私の双剣でも刃こぼれしそうね。ソフィア、魔法で壊せる?」
ルナが眉をひそめて尋ねた。
「狭い空間で爆破魔法を使えば、洞窟ごと崩落して生き埋めじゃ。余が重力魔法で天井を支えるから、削り取るしかないな」
ソフィアが小さく肩をすくめた。
「それなら、ボクの出番だね」
ユウは不敵に笑うと、コントロールパネルのレバーを握りしめた。
「ナビ、重機モードのドリル仕様に移行。出力最大で頼む!」
『了解です! キャンピングカー・重機モード――ドリル仕様、変形を開始します!』
ナビの力強い声と同時に、車体が金属音を立てて変形を始めた。
車体前面が大きく開き、巨大な螺旋状のドリルアームがせり出してくる。ドリルの刃先には、ネットスーパーで仕入れた人工ダイヤモンドと、ガーネット秘伝の超硬魔導合金がコーティングされていた。
「変形完了です、マスター」
後部座席で見守っていたナナが報告する。
「よし、突入するぞ! みんな、しっかり掴まってて!」
ユウがレバーを押し込むと、キャンピングカーのエンジンがかつてない咆哮を上げた。
空気を引き裂くような甲高い回転音が響き渡り、ドリルが高速回転を始める。四連装のLEDハイビームが起動し、周囲の暗闇を真昼のように照らし出した。
ガガガガガガガガッ!
巨大ドリルが岩盤に接触した瞬間、激しい火花と金属粉が飛び散る。車体に凄まじい振動が走るが、超硬ドリルは硬質岩盤をまるで豆腐のように削り取っていく。
「すごい……! 本当に掘り進んでる!」
セリスが火花の向こうを凝視しながら叫んだ。
「ソフィア、天井はどう?」
「ふん、余の重力結界を甘く見るな。ビクともせんわ」
ソフィアが片手を掲げ、紫色の魔力で崩落してくる岩を空中で静止させている。
削り出された土砂は自動的に左右へ流され、キャンピングカーは確実に漆黒の壁の奥深くへと突き進んでいく。
そして、激しい振動が数分間続いた後、ふっと手応えが軽くなった。
フロントガラスの先に、再び光るクリスタルの群生が現れる。
「抜けたぞ!」
ユウがレバーを引き戻すと、ドリルはゆっくりと回転を止め、車体へと格納された。
目の前に広がっていたのは、先ほどの大空洞とは異なる、人の生活の気配が漂う奇妙な地下都市の光景だった。




