第207話: 管制塔への突破口
中央管制塔を囲むのは、凍てつく厚い氷に覆われた超合金製の強化隔壁だった。その厚さは数メートルにおよび、いかなる魔法や砲撃も跳ね返す難攻不落の防壁としてそびえ立っている。
だが、その強固な防壁の前に、一台のキャンピングカーがエンジンを唸らせて停車した。
「ナビ、隔壁の物理突破を行う。重機モードへシフトしてくれ」
「了解しました、マスター。車両形態を『重機モード』へ移行します。駆動系出力最大、物理衝突用ラムおよびメガブレードを展開」
ナビの涼しげなアナウンスと共に、キャンピングカーのボディが変形を開始した。
頑丈なフロントバンパーから、ミスリル合金で補強された極厚の排土板がガキィンとせり出し、鋭利な突撃用衝角が前方に突き出る。車高がぐっと持ち上がり、無骨なキャタピラが雪と氷を噛み締めるように回転を始めた。
車外では金属のきしむ冷たい駆動音が響き渡り、雪煙が吹き荒れている。
しかし、結界に守られた車内は、信じられないほど平和だった。コタツの上にはツムギがよそってくれたおでんがあり、ちくわやはんぺんから琥珀色のダシが染み込んだ湯気がまっすぐ上っている。
「おいおい、コタツに入ったままであの鉄壁に突っ込む気かい?」
ルナが呆れたようにちくわを口に運びながら言う。
「コタツの中にいる方が安全だし、体が冷えなくていいからね。それに、ツムギのスープも冷めない」
「マスター、その判断は極めて合理的です。防振・防音結界は完全に機能しておりますので、ご安心ください」
ナビが誇らしげにホログラムの胸を張る。
ナナが運転席の隣から、青い瞳で隔壁の一点を指差した。
「マザーの構造データをスキャンしました。隔壁の右下方、第二接合部が最も強度が低くなっています。あそこに最大出力で衝突してください」
「よし、行くよ!」
ユウがアクセルを踏み込むと、キャンピングカーは爆発的な加速で突進した。
――ゴォォォォン!!!
天を突くような轟音と地響きがスチームガルドの中央に響き渡る。
しかし、車内には「コトッ」とコップが軽く揺れる程度の振動しか伝わらなかった。目の前で、巨大な合金の隔壁が紙細工のように歪み、大破して四散していく。
突撃モードのキャンピングカーは、破片を容赦なく撥ね退けながら、管制塔の内部へと物理的に侵入した。
ナナは前方の通路を見据え、冷静に告げる。
「第一障壁の突破を確認。これより内部ルートを案内します。三秒後、右折してください」




