第203話: ウォーター・キャノンの洗車攻撃
「防壁の内部突破に失敗。予備戦力の投入および、最大出力による同時砲撃シーケンスへと移行する」
防壁の外側では、さらに増援の機械兵たちが路地を埋め尽くし、一斉にレーザーライフルのチャージを開始していた。赤々としたエネルギーの光がスチームガルドの冷たい霧を切り裂き、大気がじりじりと焦げるような異臭が漂う。
「さすがに数が多いね。ナビ、そろそろこちらも反撃に移ろう。ただし、非殺傷でね」
「かしこまりました、マスター。本車両が誇る高圧洗浄システム――『二連装魔力砲』を起動します。ついでに、彼らの薄汚れた装甲をきれいに洗って差し上げましょう」
ナビの頼もしくも少し皮肉混じりの声がスピーカーから流れる。
直後、キャンピングカーの屋根部分のハッチが電動音を立ててスライド展開した。中から姿を現したのは、ミスリル合金で補強された強固な二連装の砲身だ。砲口が駆動音と共に、路地を埋め尽くす機械兵たちへと向けられる。
「照準固定。水流に魔力ジャミング波を付与。……発射します」
ズドォォン! と空気を震わせる重厚な発射音が響き、二本の極太な水柱が砲口から噴射された。
それはただの水ではない。ネットスーパーで大量に仕入れたミネラルウォーターに、ユウの魔力と、ナビの電磁妨害パルスを極限まで圧縮して練り込んだ特製の高圧魔力水流だ。
猛烈な勢いで放たれた水流は、レーザーの光弾を正面から押し潰し、機械兵たちの集団へと直撃した。
「ギ、ギギ……高水圧による姿勢制御の喪失……水浸入警告……」
自律機械兵たちは、まるで台風の濁流に飲み込まれたかのように、次々と吹き飛ばされて路地を転がっていく。
さらに、水流に含まれた魔力ジャミング波が、彼らの外装の隙間から内部回路へと瞬時に浸透した。ナビが設計した妨害パルスは、機械兵たちの電子頭脳と魔力制御コアに直接干渉し、システムを安全にフリーズさせる機能を持っていた。
「バチバチ、ショートしてるんよ! すごい威力じゃ!」
「フフン、水遊びにしては上出来じゃな。機械のくせに防水対策が甘いのではないか?」
ツムギとソフィアが面白そうに眺める中、機械兵たちは次々と火花を散らしながら、その場に崩れ落ちていった。
完全にシステムがシャットダウンし、赤い単眼のライトが静かに消灯していく。殺傷することなく、都市の精鋭部隊は文字通り「洗い流され」て無力化されたのだ。
ずぶ濡れになって路地に転がる鉄くずの山を見つめ、ナビは「洗車サービスは完了しました。料金はマザーのメインフレームから直接引き落とさせていただきます」と、満足そうにホログラムの胸元を張るのだった。




