第185話: 雪原の微弱な魔力反応
「うーん……やっぱり、寒い日に暖かい部屋で食べるアイスは最高だねぇ……」
「ユユー、もう一個! ララ、もう一個食べるー!」
キャンピングカーが猛吹雪の雪原を爆走しているというのに、車内は完全に平和ボケした空気に包まれていた。
重装甲列車モードの圧倒的な走破性と防音結界のおかげで、外の地獄のような環境が嘘のように静かで快適なのだ。
僕がネットスーパーの端末を開き、ララにおかわりを召喚しようとした、その時だった。
『ピーン』
車内に、控えめだが少し緊張感のある警告音が鳴り響いた。
「どうしたの、ナビ? 何か巨大な魔物でも見つかった?」
「いえ。進行方向、左前方八百メートルの地点……雪面下約三メートルに、微弱な魔力反応を検知しました」
ナビの声に、コタツで溶けていたルナやカエデが僅かに顔を上げる。
「魔力反応って……こんな猛吹雪の中で? 魔物じゃないの?」
「生体反応とは異なります。人工的な……魔力炉の稼働パターンに近い波形です」
「人工的? つまり、誰かが作った機械ってことか」
僕はコタツから首だけを出して、ホログラムモニターを確認する。
吹雪のレーダー映像の中に、点滅する小さな赤い点があった。
「状態はどうなの?」
「非常に危険です。魔力炉の出力はすでに一パーセント未満。このまま放置すれば、あと十数分で完全にコアが凍結し、機能停止(死亡)に至る確率が九十九パーセントです」
「十数分……!」
それは見過ごせない。
いくら外が寒くてコタツから出たくないからといって、目の前の命(機械かもしれないが)を見捨てるような真似はできない。
「ナビ、進路変更。その反応の真上まで急行して。到着次第、外部クレーンを展開して掘り起こす」
「承知しました。ルート変更、完了。到着まであと四十秒」
僕は名残惜しいがコタツから抜け出し、防寒コートを羽織った。
ツムギもフライパンを置き、ルナたちも武器を手に立ち上がる。
「マスター、ポイントに到着しました。魔力除雪プラウの角度を調整し、対象の上部にある積雪を一気に吹き飛ばします」
ズザザザァァァッ!!
キャンピングカーの巨大な鉄の刃が、厚さ三メートルの雪の壁をえぐり取る。
そこから、重機モードの遺物である「魔力クレーンアーム」が車体上部からウィーンと伸びていった。
「アーム降下……対象を捕捉しました。引き上げます」
モニター越しに見えるクレーンの先には、分厚い氷の塊に包まれた、人間ほどの大きさの何かがぶら下がっていた。
「カーゴルーム(後部倉庫)のハッチを開けて。そのまま中に運び込もう」
僕たちは急いでカーゴルームへと向かった。




