第184話: 車内は常夏の極楽空間
外装がどれだけ無骨で厳つい装甲列車になろうとも、キャンピングカーの内部は最高級の居住空間のままだ。
いや、むしろ今回のモードチェンジに合わせて、リビングの構造が少しだけ変化していた。
リビングの中央、床暖房が最も効いている特等席に、デデンと鎮座する四角い物体。
上質な肌触りの分厚い布団が掛けられ、その上には一枚の大きな天板が乗っている。
「で、出たわね……! 人間の闘争心を根こそぎ奪い去る、最悪の魔導具……ッ!」
「こ、コタツ……! 拙者、二度とあの中には入らないと……あの中の暖かさに屈しないと誓ったはずなのに……ッ!」
ヤマトでコタツの恐ろしさ(魔力)を身をもって体験したルナとカエデが、後ずさりしながら震えている。
だが、そんな二人の決意など、外の猛吹雪と目の前の暖かさのコントラストの前には無力だった。
「ユユー! ララ、ここ入るー!」
「うむ。わらわはここのポジションが良いのじゃ」
真っ先に飛び込んだのは、狐獣人のララと、大賢者ソフィアだ。
二人が気持ちよさそうにコタツの中に足を突っ込んでいるのを見て、ルナとカエデも限界を迎えたらしい。
「……ちょっとだけ。ちょっとだけだからね!」
「足先を、ほんの少し温めるだけでござる……!」
言い訳をしながらコタツに滑り込んだ二人は、その直後、「ふにゃぁ……」というだらしない声を出して完全に溶けた。
「ふふっ。やっぱり、日本の冬の風物詩といえばこれだよね」
僕も最後にコタツに入り、首まで布団を被る。
下半身を包み込む絶対的な温もり。外の窓を叩く猛吹雪の音が、むしろこの安全な空間の心地よさを強調してくれる。
「さて、それじゃあお待ちかねのデザートタイムにしようか。ネットスーパー、起動」
僕は空中にホログラムのウィンドウを出し、お気に入りリストから『あの商品』を四つカートに入れた。
ポンッ、という軽い音と共に、テーブルの上の段ボール箱が具現化する。
「はい、お待たせ。冬のコタツといえば、これだよ」
僕が取り出したのは、高級バニラアイスを柔らかいお餅で包んだ、日本が誇る至高の冬アイス『雪見だいふく(的なもの)』だ。
「……ユウ。アンタ、外がこんなに寒いのに、なんで冷たいものを食べるのよ?」
「まあ騙されたと思って食べてみてよ」
ルナが怪訝そうにアイスを口に運び……次の瞬間、カッと目を見開いた。
「なにこれ……!? 冷たいのに、お餅がもっちもち! 中のアイスが口の中で溶けて……コタツの暖かさと混ざり合って、とんでもなく美味しい……!」
「うむ! この『熱』と『冷』の究極のコントラスト! まさに神々の遊戯じゃ!」
ソフィアが興奮した様子で二個目のアイスに手を伸ばし、ララは口の周りを真っ白にしながら幸せそうに尻尾を振っている。
猛吹雪の極寒の大地を、重装甲で蹴散らしながら爆走するキャンピングカー。
その車内で、僕たちはコタツに入ってアイスを食べるという、世界一くだらなくて、世界一幸せなスローライフを満喫していた。




