第183話: 新形態・重装甲列車(スノーピアサー)モード
『オーケー、理論上の構築は終わった! あとはそっちで、ユウのスキルに乗せて具現化しな!』
「データ受信確認。ガーネット殿、徹夜作業お疲れ様でした。後ほどプレミアムコーティング剤の余りをお送りします」
『アタシはドワーフだ、酒を送れバカヤロウ!』
ホログラム通信の向こうでガーネットがわめいている間に、ナビは淡々と処理を進めていく。
「マスター。ユニークスキル【マイホーム】の権限を一時的にシステムへバイパスしてください。新型車両への移行を開始します」
「了解。頼むよ、ナビ!」
僕がスキルの発動を許可した瞬間、キャンピングカーの車体が眩い光に包まれた。
『トランスフォーム、開始。外部装甲を耐寒・耐衝撃仕様の重装甲へ換装』
ガガガガッ! と重低音が響き、スタイリッシュだった車体の外側に、分厚く無骨な黒鋼の装甲板が次々と展開されていく。
それはまるで、移動する巨大な要塞のようだ。
『駆動系をタイヤから全天候型無限軌道へ変更。接地圧を分散させ、雪上走破性を極大化』
車体を支えていた八つの巨大なタイヤが内部に収納され、代わりに戦車のような太く強靭なキャタピラが現れる。
雪を噛み砕く鋭いスパイクが、マイナス四十度の冷気の中で鈍く光った。
『先頭部に大型の魔力除雪プラウ(ラッセル)を装備。進路上の障害物および積雪を物理的に粉砕・排除します』
キャンピングカーのフロント部分に、雪を左右に掻き分けるための巨大なV字型の鉄の刃が装着される。
外見は完全に、世紀末の世界を走る『重装甲列車』そのものだ。
「……うわぁ。相変わらず、外見の厳つさがとんでもないことになってるんよ……」
「しかし、頼もしいでござるな。これなら、どんな吹雪や氷塊が来ようと、文字通り粉砕して進めそうでござる」
ツムギが引きつった笑いを浮かべ、カエデが感心したように頷く。
「変形完了。これより本車両は、【重装甲列車モード】へと移行します。魔導エンジン出力最大。前進」
ズドォォォォォンッ!!
腹の底を揺らすような重低音と共に、キャタピラが回転を始める。
巨大な除雪プラウが、腰まで積もった新雪を、そして行く手を阻む巨大な氷の塊を、まるで紙屑のように左右に吹き飛ばしていく。
車体が揺れることは一切ない。
圧倒的な質量とパワーで、純白の地獄を切り裂いていく。
「すごい……! 本当に列車みたいだね!」
「これなら、北の大陸のどこへでも行けそうですね」
セリスの嬉しそうな声に、僕は満足げに頷いた。
外の世界との隔絶感。それこそが、このモードの最大の魅力だ。
「さあ、みんな。足回りも完璧になったことだし、いよいよお待ちかねの『アレ』を出そうか」
僕の言葉に、ルナとカエデがビクッと肩を震わせた。




