第181話: 次の目的地は雪景色
世界最高の美食都市、グルメンティアでの『食の祭典』。
そこで見事グランプリに輝いた僕たちは、盛大な見送りの歓声に見送られながら、再びキャンピングカーで旅に出た。
相変わらず車内は【移動式高級ホテル(リゾート)モード】のままだ。
キングサイズのフカフカなベッドがあり、魔力循環システムで常に適温が保たれた風呂があり、ツムギの専用キッチンからはいつも美味そうな匂いが漂っている。
控えめに言って、地上における極楽である。
「して、ユウよ。次なる美味は何処に求めるのじゃ? わらわとしては、この優勝賞品である『世界三大珍味』をさらなる高みへ昇華させる食材を探したいところじゃが」
備え付けのふかふかなソファの上で、大賢者ソフィアがバケツサイズのプリン(祝勝会用の特注品)を抱え込みながら尋ねてきた。
ルナやララ、そしてセリスも、僕の次の言葉を待っている。
「そうだね。これだけ美味しいものを堪能したから、次はちょっと環境を変えてみようと思うんだ」
「環境?」
「うん。北の果て、一年中吹雪が吹き荒れるっていう『北の大陸』を目指そうと思う」
僕の言葉に、セリスが目を見開いた。
「北の大陸ですか!? あそこは古代の魔導機械の残骸が転がり、通常の人間なら数時間で凍死してしまう極寒の不毛地帯ですよ!?」
「そうそう。その過酷な環境が重要なんだ」
「……ユウ、まさかアンタ、そこでしか狩れない特別な魔物の肉でも狙ってるわけ?」
怪訝な顔をするルナに、僕は真顔で首を振った。
「いや、違うよ。僕はね……『猛吹雪の窓の外を見ながら、ポカポカに温かいコタツに入って、冷たい高級アイス(雪見だいふく)を食べる』という、地上最高の贅沢をやりたいんだ」
車内に、数秒の静寂が落ちた。
「……コタツ。ああ、ヤマトで出した、あの人をダメにする恐ろしい罠(魔導具)ね……!」
「ユユー! ララ、そのコタツってやつに入って、冷たい甘いの食べるーっ!」
「コタツ! 拙者、あの魔道具には二度と敗北しないと誓ったはずなのに、名前を聞いただけで足が……ッ!」
ヤマト編でのコタツの魔力を思い出したルナが戦慄し、ララが尻尾を振って喜び、侍のカエデがなぜか震え上がっている。
「マスター。その極めて個人的かつ非効率な欲望のために、本車両の断熱結界レベルを最大まで引き上げ、さらに車内温度を一定に保つための私の演算量と魔力消費を、少しは考慮していただけませんか?」
天井のスピーカーから、ナビの呆れたような、ひんやりとした声が降ってきた。
「まあまあ、ナビ。その代わり、最高級のプレミアムコーティング剤を全身に塗ってあげるからさ。北の大陸の吹雪対策ってことで」
「……」
数秒の演算(沈黙)。
「……交渉成立です。現在地より北の大陸への最短ルートを算出。……マスター、車外の気温は最終的にマイナス四十度を下回ります。くれぐれも、外に閉め出されたりしないようご注意ください」
「わかってるって。一歩も外に出る気はないよ」
こうして僕たちは、ただ「究極のダラダラ生活」を満喫するためだけに、人の住めない極寒の地、北の大陸へと進路を向けたのだった。




