SS: 三ツ星シェフの新しい目標(レオン視点)
「……信じられない。この世に、これほどまでに完成された『渾沌』が存在するとは」
食の祭典が終わり、静けさを取り戻した私の厨房。
私は、あの『ヤマトの天才シェフ』ツムギ殿から別れ際にこっそりと渡された、小さな小瓶を見つめていた。
中に入っているのは、予選で彼女が使ったというあの神秘的な褐色の液体――『濃厚・お好み焼きソース』だ。
試しに一滴だけ小皿に垂らし、舐めてみる。
「……っ!!」
再び、激しい衝撃が私の味覚を駆け抜けた。
甘味、酸味、塩味、そして数十種類……いや、数百種類ものスパイスや野菜の風味が、複雑に絡み合いながらも、完全に一つの味として調和している。
私のようなエルフが、膨大な魔力と数百年という果てしない時間をかけて追求してきた『味の錬金術』が、たった一瓶の液体の中に完成されていたのだ。
「フッ……完敗だな。いや、むしろ清々しい気分だ」
私は、ずっと探していた。
三ツ星という頂点に立ち、料理人としてこれ以上の高みはないと、心のどこかで限界を感じていた。
だが、彼らは教えてくれたのだ。「お子様ランチ」という、枠に囚われない全く新しい料理の概念と、この世界にはまだ私の知らない『未知なる美味』が無限に存在しているということを。
「待っていろよ、ヤマトの奇跡。次に出会う時までに、私はこの『ソース』の秘密を完全に解き明かし、私の魔法料理と融合させてみせる……!」
私は袖をまくり上げ、新しい食材の発注書に向かった。
数百年ぶりに、胸の奥底で燃え上がるような、熱い探求心が蘇ってくるのを感じながら。




