第176話: キャンピングカーの総力戦
決戦前夜。
僕たちのキャンピングカー(移動式高級ホテルモード)は、広場の片隅で夜通し煌々と明かりを点けていた。
システムキッチン・プロの中で、ツムギがかつてないほどの集中力で試作を繰り返しているのだ。
「……ナビちゃん! オーブンの温度、あと二度だけ下げて! お肉の中心温度が65度になるようにキープなんよ!」
『了解しました、ツムギ殿。魔導オーブンの出力を微調整。……完璧なロゼ・カラーの焼き上がりを保証します』
このキッチンはただの調理場ではない。
最新のIHヒーター、超精密な温度管理システム、瞬間冷凍庫、そしてナビによる完璧なサポート。(そこに僕のチート魔力供給があわさっている)
文字通り、「世界一の厨房」と呼ぶにふさわしい空間なのだ。
「よしツムギ、次に出す食材のリストはこれだね」
僕はネットスーパーの画面を展開し、次々と現代の究極食材や調味料を取り出していく。
「……まずは、これ!」
ツムギが指差したのは、豊穣の森で手に入れた極上の赤身肉『ビーフ・ミノタウロス』。
そして、ソフィアが絶対零度で保存していた幻の珍味『キング・キャビア』。
さらに、温泉郷で手に入れた『幻の山菜』と『黒豚』だ。
「これまでの旅で見つけた、極上のローカル食材たち……それに、師匠の『お取り寄せ(ネットスーパー)』の調味料を全部乗せするんよ!」
「全部乗せって……ツムギ、まさか」
僕はツムギの考えているメニューの全貌に気づき、思わず目を見開いた。
「ただの一皿で勝負するんじゃないのか?」
「うん! だってテーマは『未知なる美味の表現』なんよ! 一つの味だけじゃもったいないけん! だからウチは、ヤマトの洋食屋さんの伝統……『夢の全部乗せプレート』を作るんよーっ!」
それは、複数の極上料理を一つの皿の上に美しく盛り付ける、奇跡の調和術。
フランス料理のフルコースすら凌駕する、見た目も味も最高にワクワクする『大人のお子様ランチ』を作ろうというのだ。
「あはは! さすがツムギ、発想が規格外だ! よし、僕も全力でサポートするよ!」
「わらわも、食材の温度管理(氷結魔法)なら手伝ってやろう」
「アタシ、玉ねぎのみじん切りなら目にも止まらぬ速さでできるよ!」
「むむっ、ララは……味見のプロだよ!」
「私も、食器磨きとお手拭きの準備をいたします!」
全員が笑顔で、キャンピングカーの中で自分の役割を果たす。
旅の終着点のような、最高に温かく、活気に満ちた夜。
僕たちの『食の総力戦』の準備は、着々と、そして完璧に進んでいった。




