第160話: 星空の下のキャビア・ディナー
その日の夜。
豊穣の森を安全なペースで抜け出した僕たちは、星空がキレイに見える平原にキャンピングカー(ホテルモード)を停め、最高級のディナータイムを迎えていた。
「さぁさぁ、皆さんお待ちかねなんよー! 今夜のメインディッシュ、『キング・キャビアの冷製・極細パスタ ~森の香りを添えて~』なんよ!」
ツムギが厳かに運び込んできたのは、氷の器に美しく盛り付けられた、透き通るような細い麺だった。
そしてその上には――昼間ソフィアが瞬間冷凍し、ツムギが絶妙な温度管理で解凍した、黒真珠のように輝く『森のキャビア』が、これでもかとばかりに山盛りに乗せられていた。
「おおおおっ!! 黒光りしておる! 美しい……そしてこの磯の香り(森の魔物だけど)たまらんのう!」
「ゴクッ……いただきまーす!!」
ルナとソフィアが、フォークにパスタと大量のキャビアを絡め、一気に口へと運んだ。
「……っ!! な、なんだこれぇぇぇっ!?」
一口食べたルナの目が、驚愕に見開かれる。
「口の中で……プチップチッて極上の食感が弾けたと思ったら、濃厚でまろやかな塩気と、ものすごい魔力が溶け出してきた……!」
「うむ……! この細い麺とやらが、キャビアの塩味を絶妙に受け止め、オリーブという油の香りが全体を上品にまとめている。まさに至高! 大賢者の魔力も全回復じゃー!」
あの超高級食材キャビアを、スプーンですくって食べる(乗せ放題)という、王族でも見れないような贅沢。
僕も一口食べてみたが、あまりの美味しさに語彙力が消滅した。ただひたすらに、美味い。
「ふふふ、みんな喜んでくれてウチも嬉しいんよー! ユウ師匠の『お取り寄せ(ネットスーパー)』で極細の麺を出してくれたおかげやね!」
「キャビア、ちゅるちゅる! おいしー!」
ララも顔中を黒くしながら、器用にパスタをすすっている。セリスはもう、感動のあまり無言で涙を浮かべながら咀嚼していた。(たぶん明日には神様に感謝のお祈りを一時間くらい捧げるだろう)
「みんな、豊穣の森探索、お疲れ様。最高の収穫(食材)だったね」
僕は冷えた白ワインが入ったグラスを掲げた。
「次の目的地は……この平原を抜けたところにあるという、『温泉郷・ユクムラ』だ。極上の食材を満喫した後は、温泉でゆっくりと日頃の疲れ(マッサージ機で癒やされまくっているが)を癒やそうじゃないか」
「「「カンパーイ!!」」」
キャンピングカーのリビングに、明るい笑い声とグラスが触れ合う音が響く。
満天の星空の下、僕たちの移動式ホテルは、美味しいものへの飽くなき欲望をエネルギーにして、さらなる西の大陸へと進んでいくのだった。
(第16章 珍味の森とキャビア・スライム編 完)




