第156話: 極上焼肉とフルーツタルト
「お待たせなんよー! 『ビーフ・ミノタウロスの極厚ステーキ・ガーリックバター乗せ』の完成やー!」
キャンピングカー横の広場に、特大のお皿がドスンと置かれる。
表面はこんがりと焼け、分厚い断面からは美しいピンク色の肉汁が溢れ出している。その上に乗ったガーリックバター(ネットスーパー産)が、ステーキの熱でとろりと溶け出し、反則級の良い匂いを放っていた。
「「「いただきまーす!!」」」
全員が一斉にフォークを突き立てる。
僕も大きめに切り分けた肉を、思い切って口に放り込んだ。
「……っ!! な、なんだこれ……! 噛まなくても、肉が溶けて……!」
咀嚼した瞬間、爆発的な牛肉の旨味と、上品で甘い脂が口いっぱいに広がった。
まったくスジがなく、まるで高級なマグロの大トロのように溶けていく。ビーフ・ミノタウロス、なんて恐ろしい魔物だ。
「んん〜〜っ! おいひー! ララ、お肉だいすきー!」
「信じられない旨さだね! 今までの道中で食べたどんな肉よりも……ううっ、ワインが欲しい! ワイン持ってきて!」
「あ、それならネットスーパーの一番高い赤ワインも開けちゃおうか」
ルナが感動で涙目になりながら悶絶し、ララはすでに三枚目のおかわりに突入している。
セリスも上品に口を抑えながら、「はわわ……」と幸せそうな吐息を漏らしていた。
「さぁさぁ! これで終わりじゃないんよ。食後のお楽しみに、トレントから採れたてフルーツを使った特製タルトもあるからねぇ!」
ツムギが、満面のドヤ顔でキャンピングカーの中から「宝石箱」のようなケーキを持ってきた。
さきほどソフィアが収穫した7色の果実が、ツヤツヤのカスタードクリームの上で輝いている。
「おおおお……! まさに芸術じゃ! わらわの活躍あっての至高のデザートじゃな!」
一番に飛びついたソフィアが、大きな一口でタルトを頬張る。
その瞬間、大賢者の時を止めたような美少女の顔が、ふにゃぁっとだらしなく溶けた。
「……甘い! ななんじゃこの果実は。噛んだ瞬間、果汁が弾けて……しかも種類ごとに、リンゴや桃のような、全く違う味がするぞ!」
「フルーツの新鮮な甘さだから、いくらでも食べられそうなんよ。……ん〜ん、最高!」
食後のデザートまで完璧に平らげ、僕たちはアウトドアチェアの上でポッコリと膨らんだお腹をさすっていた。
ヤマトにいた頃の食生活も最高だったが、異世界の未知の食材をハントして、その場で最高級の料理に仕上げて食べるのも、キャンピングカー旅の醍醐味だ。
「いやぁ、食った食った。豊穣の森……最高のダンジョンだね」
「うむ。毎日ここでも良いぞ、わらわは」
「……で、どうするのユウ? 森の出口に向かうのかい?」
ルナが爪楊枝(これもネットスーパー産)をくわえながら聞いてくる。
僕は、お腹いっぱいになりながらも、ニヤリと笑った。
「もちろん、まだ進むよ! あの村の商人が言ってたでしょ。この森の奥には、森のヌシとも言える『究極の珍味』がいるらしいからね」
食欲という名の果てしない欲望は、少しぐらいでは満たされない。
僕たちは極上のランチの余韻を楽しみながら、さらに森の奥――――幻の珍味が待つ深部へと、キャンピングカーを走らせ始めた。




