第155話: 森のキャンプ場と最新キッチン
見晴らしの良い、湧き水のある広場を見つけた僕たちは、そこにキャンピングカーを停めてオーニング(日よけのタープ)を展開した。
「さぁて、獲れたての食材ですぐにお昼ご飯にするんよー!」
ツムギが気合十分に腕まくりをする。
これまでは車内のキッチンで調理することが多かったが、今回は『移動式高級ホテルモード』へのアップデートに伴い、なんと「外部引き出し式のアウトドア・キッチンユニット」も実装されているのだ。
「すげー! 車の横から、そのままキッチンが出てきたぞ!」
「あはは、これも師匠とガーネットちゃんのおかげなんよ! 外の空気を吸いながら、最新のコンロが使えるなんて夢みたいやわ!」
キャンピングカーの側面の装甲がウィーンと開き、そこから折りたたみ式のIHクッキングヒーターと、高級な鉄板焼き用のグリル台がスライドして出現した。
大自然のど真ん中に、突如として高級レストランのオープンキッチンが現れたような、強烈なミスマッチ感である。
「よし、アタシが火をおこすぞ!」
「ルナ、火はいらないんよ! このスイッチをポチッと押すだけで、鉄板がアツアツになるからね!」
「……相変わらず、ユウのチート道具は情緒がないねぇ」
文句を言いながらも、ルナは嬉しそうにツムギのサポート(野菜のカットなど)に入った。
セリスとララは、キャンピングカーの外部スピーカーから流れる静かなBGM(ボサノバ風)を聴きながら、おしゃれなアウトドアチェアでくつろいでいる。
大厄災の直後だというのに、僕たちの生活レベル(QOL)は完全にバグっていた。
「じゃあ、さっきルナさんが峰打ちで倒してくれた『霜降りブロック肉』、焼いていくよー!」
ツムギが、鮮やかな手つきで超巨大な特上ブロック肉を分厚く切り分ける。
そして、ネットスーパーで調達した高級岩塩と粗挽き黒胡椒だけをシンプルに振り、アツアツの鉄板の上に豪快に乗せた。
ジュゥゥゥゥゥッ!!
静かな森の中に、肉が焼ける暴力的なほどにいい音が響き渡る。
脂が焼ける香ばしい匂いが風に乗って広がり、広場にいた全員の喉が、ゴクリと同時に鳴った。
「あわわわわ……匂いだけで、もう美味しいのなんよ……!」
「ユユー! はやく、はやくたべたいー!!」
シッポをブンブン振って大興奮するララをなだめながら、僕はツムギの手際に見惚れていた。
豊穣の森の「極上の食材」と、キャンピングカーの「最新調理設備」、そしてヤマト随一の「天才シェフ」の腕前。
この3つが合わさった時、はたしてどんな悪魔的な料理が生まれるのか。僕の期待と食欲は、最高潮に達していた。




