第153話: いざ特鮮食材めぐりの狩りへ
『マスター。目標エリア「豊穣の森」の境界線に到達しました。環境魔素濃度グラフ、通常の森の約3倍です。ただし、有害な瘴気成分の検出はゼロ。極めて清浄な空間です』
ナビの報告とともに、キャンピングカーの巨大なフロントガラスいっぱいに、見渡す限りの深い緑が広がった。
窓を少し開けると、森の中からはただの土や木の香りだけでなく、なんだかお腹が空いてくるような、不思議な「甘くて香ばしい匂い」が風に乗って漂ってくる。
「ふんふん……! ユウ、なんだか甘いアメ玉みたいな匂いがするよ!」
「ホントだ……それと、どこかで極上のステーキを焼いてるような匂いまで……」
ララが犬(狐)のように鼻をヒクつかせ、ルナがゴクリと喉を鳴らす。
まさに噂通りの『食のダンジョン』だ。
「よし、キャンピングカーはステルス・プロテクトモードで森の入り口に待機。みんな、外に出て『食材』を探しに行くぞ!」
「「「おーっ!!」」」
外に出た僕たちは、武器……ではなく、それぞれ「大きな網」や「麻袋」を手に、探索を開始した。(ツムギは「鮮度が落ちない魔法のクーラーボックス(マイホームの産物)」を抱えている)
少し歩くと、すぐに最初の「獲物」と遭遇した。
「ンモォォォォォンッ!!」
木立の中から現れたのは、通常の牛の3倍はあろうかという巨体を持つ、二足歩行の牛型の魔物……『ミノタウロス』だ。
だが、その見た目は僕たちの知っている凶暴なそれとは少し違った。筋骨隆々なのは同じだが、毛並みが異常にツヤツヤしており、体から微かに美味しそうな霜降りのオーラ(?)を放っている。
『スキャン完了。名称:ビーフ・ミノタウロス。危険度は低いですが、通常の斬撃系魔法で切断すると、肉の旨味成分(魔力)が空気中に逃げてしまう特性があるようです』
「つまり、外傷を与えずに『気絶』させなきゃいけないってことか……」
僕が腕組みをして悩んでいると、
「任せな! そういう『お宝(肉)を傷つけずに奪う』のは、盗賊の得意分野だよ!」
ルナが双剣の峰(背の部分)をパチンと鳴らして、木々を蹴って跳躍した。
「そぉれっ! 盗賊奥義・極上スタン(峰打ち)!!」
ドゴォォォォンッ!!
ルナの神速の峰打ちが、ビーフ・ミノタウロスの首の後ろ(延髄の急所)にクリーンヒットする。
巨体の魔物は、白目を剥いて「ンモォォ……」と短く鳴いた後、ドスンと地面に崩れ落ち――光の粒子となって消滅し、後には信じられないほど見事なサシ(霜降り)が入った、巨大な『特上ブロック肉』がゴロンと残された。
「や、やったー! いきなり最高級の霜降り肉なんよー!」
「ウヒョー! 見ろよこの見事なサシ! 今夜はステーキだー!」
ツムギとルナがハイタッチをして喜ぶ。
世界の平和を守るためではなく、ただ今夜の胃袋を満たすためだけの狩り。
僕たちは最高の笑顔で、豊穣の森の奥へと元気よく進んでいった。




