第151話: ホテル・キャンピングカーの優雅な朝
「ふぁぁ〜……よく寝たぁ。……ってか、一生ここで寝てたい……」
キャンピングカーの広々としたリビングで、大きな欠伸が響いた。声の主はルナだ。
『移動式高級ホテル(リゾート)モード』へのアップデートから数日。ヤマトを出発して大陸を西へと進む僕たちの道中は、ただひたすらに「極限の堕落と快適さ」に満ちていた。
「ルナよ、まだその椅子にへばりついておるのか? いい加減、わらわにもその『ぜんじどうまっさーじき』とやらを譲らぬか」
「やーだー。この肩のモミ玉、アタシの短剣の素振りで凝り固まった筋肉を絶妙にほぐしてくれるんだもん……あ〜、極楽極楽」
ソフィアが杖でツンツンと突くが、ルナは全自動マッサージチェアの背もたれに深く沈み込んだまま、微動だにしない。
車内は、ホテル並みの空調魔法によって完璧な「心地よい春の朝」の温度と湿度に保たれている。
「ララちゃんのジャンプ! えーいっ!」
「わふっ! ワンワン!」
奥のベッドルームからは、キングサイズの最高級マットレスの上でトランポリンのように飛び跳ねるララと、それを追いかけるポチの歓声が聞こえてくる。
「皆様、おはようございます。……なんだか、ヤマトにいた頃よりも、すごく平和ですね」
セリスが、ふかふかのソファに深々と腰掛けながら、壁一面の巨大モニター(テレビ)で環境映像(爽やかな森の景色)を眺めて微笑んだ。
そう、ヤマト編のヒリヒリした緊張感がまるで嘘のようだ。これこそが僕の求めていた、真のスローライフである。
「師匠! みんなー! 朝ごはんできたんよー!」
キッチンルーム――『システムキッチン・プロ』から、ツムギの明るい声と、たまらなく美味しそうなバターの香りが漂ってきた。
ダイニングテーブルの上に並べられたのは、ネットスーパーで調達した超高級食パンの厚切りトーストと、ヤマトの新鮮な卵をふんだんに使った、文字通り「黄金色に輝く」スクランブルエッグ。そして、かりかりのベーコンだ。
「この最新式の『おーぶん・とーすたー』っていう魔法の箱、ほんとに凄かよ! 外はサクサクなのに、中はもっちりフワフワに焼きあがるんよ!」
ツムギが目を輝かせて力説する通り、一口かじった厚切りトーストからは、濃厚な小麦とバターの香りが口いっぱいに広がった。
「んんっ! 美味いっ! ヤマトの和食も最高だったけど、こういう王道の『洋食の朝ごはん』ってのも最高だね!」
「本当じゃな! この卵のふわとろ具合、大賢者であるわらわも降参じゃ!」
絶品の朝食をあっという間に平らげながら、僕たちはこれからの旅のルートについて話し合うことにした。
次の目的地である『美食都市グルメンティア』までは、まだしばらくの道のりがある。
「さて……せっかく最高のキッチン(と専属シェフ)があるんだ。道中もただ通過するだけじゃもったいないよね」
「うんっ! ウチ、もっともっと珍しくて美味しい食材を使ってみたいんよ!」
ツムギの料理人としての探求心と、僕たち全員の「食欲」がバッチリと噛み合った。
快適すぎる走るお城での、美味しいものを探す旅。
これ以上の幸せが、この世界にあるだろうか?




