第150話: 美味と快適を求めて、いざ美食都市へ
「さぁみんな! 記念すべき『リゾートモード』初日のディナーなんよ! 今日は特別に、お祝いのフルコースなんよー!」
ツムギの元気な声とともに、広々としたリビングボード(巨大な無垢材のダイニングテーブル)に、出来立ての料理が次々と運ばれてくる。
新しいキッチン設備をフル稼働させた彼女の料理は、これまでの旅の中で間違いなく最高の輝きを放っていた。
「うおおっ!? このステーキ、なんでこんなに分厚いのに柔らかいんだ! 噛まなくても溶けるぞ!」
「あはは、それはね、新しい『低温調理器』っていう魔法の機械でお肉の旨味をじっくり閉じ込めたからなんよ! ソースも、ヤマトのお醤油と西の大陸のワインを混ぜてみたんよ」
「ほほぅ……この冷製すーぷとやらも、見事な舌触りじゃ。これなら無限に飲めるぞ」
ルナが感嘆の声を上げ、ソフィアが上品にスープを口に運ぶ。
和食と洋食。僕の現代知識(ネットスーパーの食材・調味料)と、ヤマトの食文化、そしてツムギの天才的なセンスが見事に融合した、文字通り「奇跡のフルコース」だ。
「おいしい……! ユウ、おいしいね!」
「うん……本当に美味しいよ、ツムギ。君を料理人としてスカウトしたのは、僕のこの異世界生活の中で一番の『大正解』だったよ」
「ふふっ、師匠にそう言ってもらえるのが、ウチの一番のスパイスなんよー!」
ツムギが照れ臭そうに、でも嬉しそうに笑う。
『マスター。車内温度ドリップ開始。食後の睡眠に最適な「微睡みモード(室温24度・湿度50%・微香性アロマ展開)」へシフトします』
食事が終わる絶妙なタイミングで、ナビが空調と照明を調整する。
オレンジ色の温かい間接照明に包まれながら、セリスが巨大なテレビ画面に見入っている。
「ユウ様、この『えいが』という映像魔術……何度見ても不思議で、そして面白いですね」
「気に入ったなら良かったよ。まだまだソフトはいっぱいあるから、飽きるまで見てていいよ」
ふかふかのソファ。極上のお腹いっぱい感。そして、仲間の笑い声。
キャンピングカーのタイヤが、夕暮れの街道を心地よい音を立てて転がっていく。
――ヤマト編の激闘は、すでに過去のもの。
僕たちは今、世界で一番快適で、世界で一番美味しい『マイホーム』に乗って、大陸の西の果てを目指している。
次なる目的地は、世界一の厨房・美食都市グルメンティア。
美味いものと快適さを求める僕たちのスローライフな旅は、ここからまた、新しく始まるのだ。




