第148話: ナビとガーネットの超遠隔アップデート
その日の夜。
街道沿いに車を停めた僕は、皆が寝静まったのを確認すると、こっそりとキャンピングカーの通信端末を起動した。
『通信を確立しました。ポルトの街、ガーネット工房へ接続します』
ダッシュボード上のホログラムプロジェクターから、青白い光が浮かび上がる。
現れたのは、いつものナビのアバター……なのだが。
「……あれ? ナビ、なんだいその服」
『本日のテーマは「コンシェルジュ」です、マスター。これからの旅の目的に合わせ、最適なホスピタリティを提供するイメージでアバターを新調しました』
黒のパリッとしたスーツに身を包み、白手袋まで装着したナビ(美少女ホログラム)が、深々と一礼する。(相変わらず彼女の方向性がよくわからない)
『通信、繋がったかー? おおっ、ユウ! 久しぶりだな! そっちのデカいお狐様との大喧嘩は終わったのかよ?』
通信スクリーンに映し出されたのは、油まみれのツナギを着た小柄な天才ドワーフ娘・ガーネットだった。相変わらず元気そうだ。
「うん、おかげ様でね。ヤマト編は無事に完結したよ」
『そりゃ大したもんだ。で? 今回の依頼はなんだ。またとんでもない兵器でも載せたいのか?』
「いや、逆だよ。これからの旅はひたすら『美味しいものを食べてのんびりする』のが目的なんだ。だから……この車を、僕の【マイホーム】スキルと君の魔導技術を掛け合わせて、『走る最高級ホテル(移動式リゾート)』に改造してほしいんだ」
僕がそう言うと、画面越しのガーネットの目がギラリと光った。同時に、隣のナビも「フフッ」と不敵な笑みを浮かべる。
『……面白えじゃねえか。居住性と快適極振りのスーパーカスタムってわけだな!』
『マスターからの追加要件、および私の演算した改修データ(全108項目)を送信します。ガーネット殿、同期設計の準備を』
『言われなくてもわかってるっつの! 最高の癒やし空間、ふたりでいっちょブチ上げてやろうぜ!』
天才整備士と超AI。
かつて水陸両用モードを生み出した最高の(そして少しマッドな)コンビが、通信越しにガッチリと仮想の握手を交わした。
僕は、彼女たちが展開する大量の設計図を前に、これからの旅の快適さを想像してニヤニヤが止まらなくなっていた。




