第147話: これからの旅に足りないもの
ヤマトを出国してから数日が経った。
西の大陸へ向かってのんびりと続く街道を、僕たちのキャンピングカーは順調に走っていた。
窓の外には、広大な平原と青い空。時折見かけるスライムやゴブリンといった野生の魔物も、ポチ(自動迎撃モード)やルナのナイフ投げであっさりと追い払えるため、車内は非常に平和だ。
「……んー、暇だねぇ」
リビングのソファでゴロゴロしながら、ルナが大きめの欠伸をした。
「そうですね。ヤマトでの激戦が嘘のように穏やかです。お茶、淹れましょうか?」
「お、いいねぇセリス! ありがと」
キッチンでは、ツムギがエプロン姿で何やら新しい調味料の配分を研究している。
ララはソフィアと一緒に、毛布にくるまって気持ちよさそうにお昼寝中だ。
まさに絵に描いたようなスローライフ。大厄災を打ち倒した英雄のパーティとは到底思えない、緊張感ゼロの空間である。
――しかし。
運転席でハンドルを握りながら、僕は何となく「違和感」を覚えていた。
違う。旅の平穏さに不満があるのではない。むしろ大歓迎だ。
僕が気になっているのは、キャンピングカーの『居住スペック』そのものについてだ。
「これまで……飛行、水陸両用、屋台、要塞、そして和風や城にまで変形させてきたけど……」
僕は一人でブツブツと呟く。
「でも、基本の『リビング』や『ベッドルーム』の快適さ自体は、実は第一部の頃からそんなに変わってないんじゃないか……?」
『肯定。現在の基本内装レイアウトは、マスターが初期設定した現代の市販キャンピングカー・ハイエンドモデルに準拠しています』
「やっぱり!」
僕は膝を打った。
これだけ大所帯になり、しかもツムギという専属の神シェフまでパーティに加わったのだ。
車載キッチンはツムギの超絶技巧に応えるためには少し手狭だし、ソフィアやルナたちが一日中ダラダラできるように、もっとラグジュアリーなリラックス空間があってもいい。
「これからの『究極のグルメ旅』には、何よりも食事を楽しみ、食後に極限までリラックスするための『環境』が必要不可欠だ……!」
『マスター。それはつまり、また新たな【マイホーム】の拡張アップデートを行う、ということですね?』
ナビの声が、心なしかウキウキしているように聞こえた。
「ああ、その通りだナビ。……僕たちの最強のマイホームを、さらなる『究極の癒やし形態』に進化させよう!」




