第146話: 涙と笑顔の出航式
「それじゃあ、カエデ。ゲンサイさんも。……ヤマトの復興、頑張ってね」
ヤマトから西の大陸へと続く、国境の峠道。
僕たちはキャンピングカー(通常モード)に乗り込む前、見送りに来てくれたカエデたちと最後の挨拶を交わしていた。
「ユウ殿。……本当に、本当にお元気で」
カエデが深々と頭を下げる。顔を上げた彼女の瞳には微かに涙が滲んでいたが、出会った頃のような思い詰めた表情はもう無い。立派な、次期領主としての強い顔つきだった。
その後ろには、かつて僕たちがコテンパンにした忍者部隊(黒影衆)の面々も、護衛として静かに控えている。
「師匠! ツムギちゃんも、お達者でなぁ! わしらもいずれ、サカイ一の料亭を開いてみせますぞーっ!」
遠くから声を張り上げているのは、すっかり丸くなった元・悪徳商人のエチゴヤと、その板前ムネチカだった。(彼らは今、カエデの監視の下で強制・復興労働に従事している)
ヤマトで出会った様々な人たちとの絆が、心地よく胸に響く。
「へへっ、アタシらがいない間に、特上のお宝(美味しい特産品)でもガッポリ集めといてくれよな!」
「カエデお姉ちゃん、またねーっ! ララ、また一緒に剣の修行するー!」
「皆様もお元気で! 光の加護があらんことを!」
「わらわの『ぷりん』の製法は書き残してあるな? 次に来た時は、池のようなサイズのぷりんを要求するぞ!」
ルナ、ララ、セリス、そしてソフィアも、それぞれの言葉で別れを告げる。
「みんな、また絶対会おう! 出発進行!!」
僕は窓から大きく手を振りながら、アクセルを踏み込んだ。
『マスター。国境の峠を越えます。これより、西の無所属地帯へ進入』
ナビの落ち着いた声と共に、キャンピングカーが軽快な音を立てて山道を下っていく。
ルームミラー越しに見えるヤマトの景色が、少しずつ小さくなっていく。
不思議と、寂しさはなかった。僕たちには『マイホーム』という最高の拠点と、無敵の仲間たちがいる。そして、向かう先にはまだ見ぬ『世界一の美味しいご飯』が待っているのだから。
「さぁ、新しい旅の始まりだ! 目指すは美食都市・グルメンティア!」
「「「おーっ!!」」」
キャンピングカーの車内に、いつもの賑やかな声が響き渡った。




