第145話: カエデの決意と名残惜しさ
いよいよヤマトを出発する日の朝。
僕たちは、キャンピングカーを「ユウの村」の広場に停め、出立の準備を整えていた。
「ユウ殿ぉ……っ!!」
荷降ろしを(ナビとポチに任せて)していると、遠くから土煙を上げて一頭の馬が駆けてきた。乗っていたのはもちろん、カエデだ。
彼女は馬から飛び降りるなり、いつもの真面目な顔を崩して、今にも泣き出しそうな表情で駆け寄ってきた。
「本当に……今日、発たれてしまうのですね。わかってはおりましたが、あまりにも急で……」
「カエデ。泣かないでよ、世界中どこからでもキャンピングカーですっ飛んで来れるんだから」
僕は苦笑しながら彼女の肩を叩いた。
「王都の復興はゲンサイさんたちに軌道に乗せてもらったし、この『ユウの村』の管理はカエデに譲るよ。ここの温泉施設や調理場はそのままにしておくから、民のため、そして君たちの憩いの場として使ってくれ」
「そんな、よろしいのですか!? あれだけの魔法の設備を……!」
「うん。僕の【マイホーム】の履歴には残してあるから、また来たらいつでも復活できるし。それに、君たちならあの温泉とご飯の味を、ヤマト中で広めてくれるって信じてるからね」
ツムギも、自分で書き溜めた「キャンピングカー秘密のレシピ帳(一部コピー)」をカエデに手渡した。
「カエデお姉ちゃん。ここにヤマトの食材でも作れる『カツ丼』のタレの黄金比、書いといたから! たまにはお父ちゃんたちにも作ってあげてね」
「ツムギ殿……っ。はい、ありがとうございます。ヤマト随一の料理人である貴女がお認めくださったユウ殿の旅路、私も遠くから見守っております」
カエデはレシピ帳を胸に抱きしめ、深く頭を下げた。
「ユウ殿! 次お会いする時は、私が自らの手でヤマト一の米を育て、ユウ殿に相応しい酒と肴を用意してみせます! ですから……絶対に、また遊びに来てくださいね!」
「ああ、約束するよ。カエデも、あまり根詰めすぎないように。たまには息抜きをするんだよ」
カエデの真っ直ぐな決意の言葉に、僕は大きく頷いた。
ヤマトで得た仲間との絆は、決してなくならない。これからは、彼らが自らの手でこの国をより豊かにしていくのだ。




