第143話: 宴と笑顔の絶えない夜
宴が中盤に差し掛かった頃、広場の中央で「おおぅっ!?」という驚きのどよめきが上がった。
視線の先には、両手で何か巨大な「黄色い塊」を運んでくるツムギと、その後ろをスキップしながらついていくソフィアの姿があった。
「えっほ、えっほ……はい、ソフィアちゃんお待たせ! 特大・ご褒美ぷりん(バケツサイズ)の完成なんよ!」
「おおおお……っ! 見よ、この神々しいまでのプルプル感! 黄金の輝き! まさに大賢者たるわらわに相応しい至高のデザートじゃ!」
ドスン、とテーブルに置かれたのは、冗談のように巨大なカラメルソースがけプリンだった。
キャンピングカーの冷蔵庫の機能と、ネットスーパーで取り寄せた本物のバニラビーンズ、そしてヤマト特産の新鮮な卵をふんだんに使った特注品だ。
「さ、さぁ頂くぞ……! ふはっ、ははは! 甘い! 甘くて口の中でとろけるゥゥ! わらわは今、世界で一番幸せ者じゃーっ!」
あの「規格外の重力魔法」で九尾の怨霊の装甲を粉砕した大賢者が、今は顔中をプリンだらけにして幸せそうに笑っている。
そのギャップに、ヤマトの民衆たちも思わず笑顔になっていた。
「すごいねぇ、アタシらのパーティって。魔法の使い道が、結局最後は『美味いもんを食うため』に集束してる気がするよ」
ルナがエールを一気飲みしながら、呆れたように笑う。
でも、それでいいのだ。それが僕の【マイホーム】スキルによる、最高のスローライフなのだから。
「ユウ殿」
不意に、少し顔を赤らめたカエデが僕の隣に座り直した。彼女の手には、ヤマトが誇る最高級の日本酒の徳利が握られている。
「この度は、本当に……何から何まで、ありがとうございました。ユウ殿と出会わなければ、私は今頃どうなっていたか……」
「だから、恩なんて感じなくていいって。僕はただ、君たちの美味しいご飯と温泉に釣られただけさ」
僕は自分のグラスを差し出し、カエデが丁寧に酒を注いでくれる。
「……ユウ殿達は、そろそろ『次の場所』へ向かわれるのですよね?」
「うん。僕の旅の目的は、『世界中の美味しいものを食べて、最高の安全地帯を作る』ことだから。ヤマトはもう十分開拓したし、君たちがいればもう安心だ」
ヤマト編は、これ以上ないハッピーエンドを迎えた。
王都を包む笑い声と、ツムギの料理の美味しい匂い。
この最高の夜が明ければ、僕たちはまた新しい大陸、新しい「美味いもん」を求めて、キャンピングカーを走らせるのだ。




