第141話: 平和な朝焼けと復興の槌音
あれから、数日が経った。
王都・キョウを包んでいた絶望の黒雲は跡形もなく消え去り、澄み渡るような青空が広がっている。ヤマトに『日常』が戻ってきたのだ。
「オーライ、オーライ! ポチ、もうちょっと右に資材を置いてくれ!」
「ワンッ!」
半壊した王都の大通りでは、大勢の職人や民衆たちが汗を流しながら復興作業に励んでいた。
そしてその中心には、キャンピングカー(建設重機モード・出力制限版)に乗った僕と、器用にアームを操作して瓦礫を撤去する愛犬型ドローン(巨大化)のポチの姿があった。
「ユウ殿ぉーっ! こちらの土台の整備終わりましたぞー!」
遠くからカエデが手を振りながら報告してくる。彼女の後ろには、同じく泥だらけになって働く元・領主のゲンサイさんの姿もあった。
あの大厄災を退けた後、僕たちはすぐにヤマトを去ることもできた。でも、あのカエデの涙を見せられて、自分たちだけスローライフに戻るのは気分が悪い。だから、王都の機能が最低限回復するまで、こうして少しだけ『重機のお兄さん』をやっているのだ。
『マスター。3Dプリンター機能による代替資材(木材モドキ)の生成、本日分完了しました。これ以上の出力は、車載魔力炉のクーリングに影響を与えます』
「ありがとう、ナビ。これくらいあれば、今日の分の修繕は十分だよ」
キャンピングカーの無限に近い物資生成能力と作業効率のおかげで、王都の復興は歴史上のどんな街よりも早く進んでいた。
「ふむ……ユウ殿のあの鉄の馬車の働きぶり、何度見ても恐ろしや。我等十人ががりで一日かかる仕事を、瞬きする間に終わらせてしまうとは……」
「お父様。ユウ殿たちは、決して私たちを支配しようなどとは考えておりません。ただ……美味しいご飯を食べて、笑い合いたいだけの、最高に自由なお方たちなのですから」
カエデたちがそんなことを話しているのが、風に乗って微かに聞こえてきた。
そう、僕たちはそろそろ、本来の「目的」に戻るべき時が近づいている。
世界を救うことなんて、僕の性に合わない。「美味しいご飯」と「平和な旅」だ。
「よしっ! 今日の作業はここまで! みんな、お待ちかねの時間だよ!」
僕がキャンピングカーのサイレンを短く鳴らすと、作業員たちが一斉に歓声を上げた。
そう。彼らがこんなにも楽しそうに働いている一番の理由は、僕の重機ではないのだ。
「おっしゃー! メシだ! 今日はなんだ!?」
「ユウの村から、ツムギちゃんが極上の差し入れを持ってきてくれたらしいぞ!」
復興の槌音は、やがて陽気な宴への足音へと変わっていった。




