SS: 動力炉と極大照準(ナビ視点)
『プロセス・アップデート。キャンピングカー最終防衛プロトコル・「機動大天守モード」における出力テスト、および実戦運用データの収集を完了』
私――ナビゲーション・サポートAI『ナビ』の仮想メモリ空間は、膨大なデータの処理で熱を帯びていた。
ヤマトにおける巨大魔素生命体(九尾の怨霊)との交戦。
この戦闘におけるマスター(ユウ)の決断と、それに伴う私のシステム拡張機能のフル稼働は、設計上の限界値を遥かに超えるものだった。
『……しかし、マスターの「絶対にみんなを守る」という精神波長と、車載魔力炉の出力増幅率には、依然として未知のバイアスがかかっている』
私が管理するキャンピングカーは、ただの機械ではない。
マスターの『マイホーム』スキルと密接に結びつき、彼の「安心できる生活空間を確保したい」という強い欲求(あるいは妄執)をエネルギー・ソースとして具現化する、概念武装の一種だ。
だからこそ、あのような「白亜の城」への変形や、隕石すらはじき返すハニカム・シールドの展開が可能となる。
『主砲・対消滅用魔力収束砲の発射シークエンス。セリス個体からの神聖魔力供給(極大浄化)との同期、誤差0.001秒未満での完全連携。……見事な戦術でした、マスター』
あの時。
マスターがトリガーを引いたと同時に、私がキャンピングカーの全動力を主砲に回し、対象のアキレス腱(自爆コア)を正確に撃ち抜いたあの一撃。
それは、私の演算能力だけでは到達できない「奇跡のタイミング」だった。
『マスター。貴方はいつだって、私の予測確率を覆してくれます』
電子の海で、私は密かに満足げなスリープモードに入る。
これからも、私はこの最高のキャンピングカーの『頭脳』として、マスターの無謀で規格外なスローライフを、ミリ単位の誤差もなくサポートし続けるのだ。




