第135話: 民の避難とユウの決断
『イエッサー、マスター。最終防衛プロトコルを開放。キャンピングカー、超装甲展開形態『機動城郭(大天守)モード』へ移行します』
ナビの冷徹な宣言とともに、キャンピングカーの床下から凄まじい振動が響き始めた。
これまでの変形プロセスをすべて凌駕する、大地を揺るがすほどの地響き。
「ルナ! ララ! 市民の誘導を急いで!」
「わかってる! ほらアンタたち、走るんだよ!」
「こっち! こっちだよー!」
ルナとララが、キャンピングカーのシールドに守られていたヤマトの民衆を、王都の外縁部へと誘導していく。カエデも民を励ましながら、最後尾を固めている。
『グオォォォォォッ!!』
僕たちの動きに気づいたのか、巨大な九尾の怨霊が、一つの尻尾を大蛇のように打ち下ろしてきた。ただの一撃で、周囲の屋敷が紙くずのように吹き飛ぶ。
「させないっ! 【ホーリー・シールド(聖光の盾)】!」
避難する人々との間に割って入ったセリスが、渾身の防壁魔法を展開する。
ズシィィィィィンッ!!
しかし、怨霊の尾の物理的質量と呪いの瘴気(重さ+腐敗効果)が、セリスの光の盾を少しずつヒビ割れさせていく。
「くぅっ……なんて重たい力……!」
「無理をするなセリス! すぐに下がるんじゃ!」
上空のソフィアが警告するが、セリスが一歩でも引けば、後ろにいる大勢の人々が押し潰されてしまう。
「……っ!!」
セリスが限界を迎えそうになった、その時。
ガガガガガガッ!! ギュイィィィィィンッ!!
セリスの後ろ――避難民たちが通り過ぎた王都の広場の中心で、信じられない光景が広がっていた。
ただの二階建てバスほどの大きさだったキャンピングカーの車体が、四方に巨大な土台(石垣のような装甲)を展開しながら、上へ上へと伸びていくのだ。
「な、なんだあれは!?」
「城が……生えてきただと!?」
避難していた民衆が、あっけにとられて立ち止まる。
黒の装甲板が瓦屋根のように組み合わさり、白銀に輝く外壁が、何層にも重なるように天へ向かって伸びていく。
そして、その頂点部。元々の運転席があった場所が、威風堂々たる「天守閣」のような展望指揮所へと形を変え、黄金の鯱ならぬ、二門の極太の主砲が太陽の光を反射して輝いていた。
「お待たせみんな。……ナビ、エネルギー・シールド最大出力で再展開!」
『了解。超重力波防壁、展開』
ブォォォォォォンッ!!
大天守となったキャンピングカーから、これまでのドーム型とは全く違う、何重もの六角形が組み合わさった光のハニカムバリアが放射状に展開される。
そのバリアは、セリスを押し潰そうとしていた九尾の尾を、凄まじい反発力で弾き飛ばした。
「ユウ様……お城に、なっちゃいました」
「ああ。ヤマトの王都には、立派な『お城』が必要だろ?」
僕は大天守の最上階から、眼下の魔物を見下ろした。
これこそが、僕の「マイホーム・スキル」と、キャンピングカーの全開出力を組み合わせた切り札。『和風・機動大天守モード』だ。
「さあ、泥狐。僕たちのヤマト(スローライフの拠点)を汚した落とし前は、きっちりつけてもらうぜ!」




