第134話: 復活する厄災『九尾の怨霊』
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
王都の石畳が割れ、巨大な地割れの中から「それ」が姿を現した。
いや、それはもはや生物というより、山そのものだった。
見上げるほどの巨体。黒い泥と呪縛のような赤い怨念で編み上げられたような毛並み。そして背後で禍々しくうねる、九つの巨大な尾。
『グォォォォォォォォォォンッ!!』
九尾の形をした大厄災が、天に向かって雄叫びを上げる。
それだけで、空を覆っていた黒い雲が吹き飛び、強烈な衝撃波が周囲の建物を粉々に砕いていった。
「な、なんてデカさだ……! 第1部の時の巨大ゴーレムより、ずっと大きいぞ!」
僕はキャンピングカーの運転席で、思わず身震いした。
あの巨大な狐の化け物は、これまでの(僕たちのチートによる)楽勝ムードを完全に吹き飛ばすほどの、圧倒的な「絶望感」を漂わせていた。
「あの馬鹿貴族……最後は自分を苗床(贄)にして、地下に封印されていた昔の化け物を呼び覚ましちまったんだね。なんて悪趣味な自爆テロだい」
ルナが舌打ちをする。
だが、その横で、ララが普段の無邪気な様子を消し去り、犬歯を剥き出しにして、聞いたこともないような低い唸り声を上げていた。
「グルルルルル……! あのニオイ……許さない。ララとおんなじ狐の姿をして、あんなクサイ匂い(瘴気)をまき散らしてるなんて……許さないっ!!」
「ラ、ララちゃん……!?」
セリスが驚いて声をかけるが、ララの怒りは収まらない。
同じキツネの獣人であるララにとって、あのおぞましい怨霊は「同族の誇りを汚す許しがたい存在」として映っているようだ。
『マスター。対象の魔力波長を再計算。……予測値の限界を突破しています。通常の火器、および防御シールドでは、長時間の耐えきれない可能性があります』
スマートウォッチから、普段は冷静なナビの声にわずかな「焦り」が混じっているのが聞こえた。
それほどまでに、あの九尾の力は常軌を逸しているのだ。
「大丈夫だよ、ナビ。これしきのことで、僕たちの旅が終わってたまるか。……それに」
僕は助手席のカエデを見つめた。
彼女は、崩れゆく王都を見つめながら、必死に震えを堪えている。
「ここには、カエデが守りたかったヤマトの民衆がまだたくさんいる。アイツにこれ以上、この国を好き勝手にさせはしない」
僕は深呼吸をし、コマンダーシートの操作パネルに両手を置いた。
「みんな、外で救出した人たちを急いで遠くへ避難させてくれ! ソフィアとセリスは、僕がアイツの注意を惹いている間に、とびっきりの一撃を準備して!」
「ユ、ユウ……アンタ一人で(キャンピングカーに乗ってるとはいえ)、あんな化物と相撲をとる気かい!?」
「一人じゃない。僕には、こいつ(最高の相棒)がいるからね!」
僕はスマートウォッチの画面を力強く叩いた。
「……ナビ! 今こそ、僕たちが温めてきた『最強のアイデア』を見せつける時だ! キャンピングカー・最終形態、変形開始!!」




