SS: 師匠の留守と大きなオムライス(ツムギ視点)
「……よしっ! これで村のみんなの朝ごはんはバッチリですね!」
キャンピングカーの厨房(私にとってのお城です!)の前で、私は腰に手を当てて満足げに頷いた。
師匠(ユウ様)たちがヤマトの王都・キョウへ出発してから数日。
この『ユウの村』には、毎日続々と新しい流民や職人さんたちが集まってきている。そんな大勢の人たちの胃袋を満たすのが、私の大事な役目だ。
最初は、師匠がいないとあんなに美味しいご飯は作れないかも……って、少し不安だった。
でも、師匠が出発する前に残してくれた魔法の調理器具(業務用ガスコンロや超大型の自動炊飯器)と、ネットスーパーで取り寄せたという大量の『カレールー』なる魔法の固形スパイスがあれば、百人前の料理だってあっという間に完成してしまう。
「ツムギちゃーん! ご飯大盛りでおかわり!」
「はーい! ちゃんと野菜玉ねぎも残さず食べてくださいよー!」
木造の大広間に集まった職人のオジサン達が、私の作った『大鍋カレーライス』を顔面から突っ込む勢いで掻き込んでいる。
みんな、最初は「なんだこの茶色いドロドロの汁は?」って警戒していたくせに、一口食べた瞬間からスプーンが止まらなくなってしまったのだ。師匠が言っていた『カレーは男のロマン』という言葉は、ヤマトでも通用するらしい。
「ふふっ……みんなが美味しいって言ってくれるの、すごく幸せだな……」
おたまでお鍋をかき混ぜながら、私は思わず頬を緩ませた。
料亭の箱入り娘だった頃には、こんな風に泥だらけの男の人たちと笑い合うことなんて絶対に許されなかった。でも、今はこの騒がしさが、私の「日常」なのだ。
(師匠……ちゃんとご飯、食べてるかなぁ)
ふと、王都へと向かったユウ様たちの顔が浮かぶ。
カエデ様やルナ様、ソフィア様たちも一緒だから、きっと怖い敵なんか全部吹っ飛ばしてしまっているだろうけど。……それでもやっぱり、ちょっと心配だ。
「よしっ! 師匠たちが帰ってきたら、約束通り『特大級』のオムライスを作ってあげなくちゃ!」
ヤマト最高峰の料理人になる。そして、師匠に心の底から「美味しい」と言ってもらう。
その目標のために、私はまた包丁を握り直す。
ユウ様の教えである「食べることは生きること」を守りながら、私はこの大好きな村で、みんなのご飯を作り続けるのだ。




