SS: 大賢者の泥遊び(ソフィア視点)
「全く……夜中に騒々しいと思ったら、随分と品の無い泥人形じゃな」
キャンピングカーの柔らかなベッド(最高級マットレス)での安眠を邪魔されたわらわは、不機嫌も極まっていた。
窓の外を見れば、いかにも「我は呪いの権化なり」と言わんばかりの、黒いヘドロのような巨大な化け物が村を練り歩いておるではないか。
「ユウよ、あやつからは非常に不愉快な匂いがするぞ。あのバルガスと同じ……世界の理を歪める、薄ら汚い瘴気の匂いじゃ」
わらわの鼻が、その存在の「根源」をはっきりと捉えていた。
ただの荒くれ者や魔獣なら、ルナやララに任せておけばよい。だが、アレは別じゃ。数百年の時を生きる大賢者たるわらわの「勘」が、あれを放置してはいかんと告げておった。
とはいえ。
「ふむ……ユウの『マイホーム』の結界と砲撃の威力も、なかなか見応えがあるのう」
わらわは杖に寄りかかりながら、キャンピングカーから放たれる極太の光線を感心して眺めていた。
ナビとかいうカラクリ箱の演算は凄まじい。わらわの魔法理論を完全に解析し、シールドの強度補正に利用しておる。あれならば、竜王のブレスですら防ぎ切るじゃろう。
「だが、泥遊びはそろそろ終いにせんとな。セリスよ、お主の光の出番じゃぞ」
「はいっ、ソフィア殿!」
気合十分の聖女娘に任せる前に、わらわは少しだけ「お膳立て」をしてやることにした。
ちょこまかと動き回られ、結界に泥をつけられては、後で洗うのが面倒じゃからの。
「【グラビティ・プリズン(重力牢獄)】!」
杖をコンと鳴らす。ただそれだけで、わらわの魔力は周囲の空間を完全に支配下へと置いた。
不可視の重力圧が、巨大な泥の式神を上から叩き潰す。
ギィィィッという悲鳴を上げる泥人形を見下ろし、わらわは鼻で笑った。
「カッカッカ! 這いつくばって泥を舐めるがよい。わらわのバカンスを邪魔した罰じゃ」
その直後、セリスの純白の光が泥人形を包み込み、跡形もなく消滅させた。
……ふむ、良い連携じゃ。
あのような瘴気の塊、いずれ根絶やしにしてやらねばならんな。
「さあユウよ。仕事は終えたぞ。寝直す前に、夜食の『ぷりん』を所望じゃ!」
世界の平和よりも、まずはわらわの胃袋を満たすのが先じゃ。
この楽しい旅は、まだまだ終わらせるつもりはないからのう。




