第128話: 黒幕の正体と『世界の歪み』
翌朝。
村はすっかり落ち着きを取り戻していた。大勢の大工たちも、昨夜の小規模な地震(ソフィアの重力魔法とキャンピングカーの砲撃音)をただの雷か何かだと思い込み、ぐっすりと眠っていたらしい。
「ひぃぃぃっ! も、申し訳ございません! 私はただ、裏陰陽寮の連中に脅されて同行していただけで……決して、ユウ殿たちを害するつもりなど!」
大広間の庭では、震え上がる監査官サイカが、簀巻きにされた裏陰陽師たちの前で土下座をしていた。
ルナが短剣で脅し、カエデが真剣な顔で彼を睨みつけている。
「脅されていた、というのは本当みたいだね」
僕はサイカの言葉に頷いた。キャンピングカーのナビに搭載された「バイタル・スキャン(嘘発見器機能)」で、彼の心拍数や発汗データを確認したからだ。この男はただの小心者で、本当に温泉と天ぷらを楽しみに一晩を過ごしていただけらしい。
「だが、こいつらは別だ」
僕は倒れている裏陰陽師のリーダー……顔に呪いの紋様がある男を見下ろした。彼はすでに意識を取り戻していたが、手足の自由をルナに奪われ、ソフィアの魔法で魔力も封じられている。
「おい、アンタら。誰の命令でうちのキャンピングカーを……いや、村を狙った?」
「……フン。貴様らのような羽虫どもに、我らが真なる主の御名など教えるものか」
男が不敵に嗤う。
『マスター。対象の衣服、および所持していた『黒い呪符』の魔力波長を解析しました。結果を報告します』
「なんだ、ナビ? 何か分かったのか?」
スマートウォッチからナビの声が響く。
『肯定。彼らが使用していた呪術のエネルギー・パターンは、第1部で交戦した大神官バルガスの邪気、並びに第10章で回収した『妖刀』の魔素と、99.8%の確率で一致します。すなわち――『世界の歪み(瘴気)』です』
その言葉に、大広間にいた全員の表情が凍りついた。
セリスが息を呑み、ソフィアが珍しく真剣な瞳で杖を握り直す。
「どういうことだよ。ヤマトの闇組織が、あのバルガスと同じ力を使っているって言うのか?」
「……そうか。合点がいったぞ」
カエデが静かに口を開いた。
「我が父・ゲンサイを狂わせたあの妖刀。元はと言えば、王都にいる『ある高位の貴族』からの贈り物だったのだ。……もしや、その貴族こそが、裏陰陽寮を操り、このヤマトに『瘴気』を撒き散らしている元凶なのでは?」
すべての点と点が、一本の線に繋がったような気がした。
単なるお家騒動や、悪徳商人の陰謀ではなかった。ヤマト国の中枢深く……キョウの地下に、世界の理を歪めるほどの巨大な邪悪が潜んでいるのだ。
「なるほどね。……どうする、ユウ?」
「僕たちの居場所は、僕の手で守るさ。たとえ相手が、世界の歪みそのものだったとしてもね」
ルナの問いかけに、僕は力強く答えた。
キャンピングカーの要塞モードも、セリスの浄化の光も、これに対抗するために授かったものだというのなら。
僕たちは、ヤマトの真の平和を取り戻すために、「キョウ」へと向かわねばならない。




