第127話: 浄化の光と重力の檻
『目標の損傷率、30%。自己再生プロトコルを検知。第二射、装填します』
「よし、このまま削り切れそうだな」
キャンピングカーの機銃と結界システムが完璧に機能し、巨大な泥の式神を村の外へのけ反らせていた。
だが、式神のドロドロとした体は、周囲の木や土を取り込んで際限なく修復されていく。
「なんなんだよコイツ! 切っても叩いても元通りになるなんて、ゾンビか何かかい!」
「ワンワンッ!」
飛び回って牽制していたルナとポチが、ジリジリと後退りする。
物理攻撃が通じないスライム系の敵は、盗賊や打撃メインの格闘では相性が悪い。
「やれやれ。安眠を妨害されたと思ったら、また泥遊びか」
「ユウ様! ご無事ですか!」
そこへ、寝巻き姿のソフィアと、急いで身支度を整えたセリスが駆けつけてきた。
ソフィアは眠たそうに目をこすりながら、巨大な式神を見上げる。
「あやつからは、あのヤッカイな『瘴気(呪い)』の匂いがプンプンしおるな。バルガスの馬鹿神官や、あの妖刀と根っこは同じじゃろう」
「えっ? じゃあ、セリスの魔法が効くのか?」
僕が振り返ると、セリスは力強く頷いた。
「はいっ! あの邪悪なオーラ……この聖女の力で、必ず浄化してみせます!」
セリスが祈りの姿勢をとる。
だが、それに気づいた式神が、真っ先に彼女を標的に定めた。
黒い泥の塊が、巨大な槍のように形を変えて結界に突き刺さろうとする。
「甘いんじゃよ、泥人形」
ソフィアが杖をコンと地面に突いた。
「【グラビティ・プリズン(重力牢獄)】!」
ズゥゥゥゥゥンッ!!
その瞬間、式神の周囲に、目に見えない強烈な重力のプレッシャーが押し寄せた。
十メートルの巨体が、一瞬にしてペシャンコに潰れ、地面に這いつくばる。重力魔法の応用だ。
「さあっ、セリス! 今のうちに!」
「はいっ! 大いなる光よ、邪悪なる呪縛を解き放ちたまえ! 【ホーリー・バースト(聖光爆発)】!!」
セリスの全身から、眩いほどの純白の光が放たれた。
その光は、村全体を覆うキャンピングカーのシールドに反射し、アンプのように増幅されて、一気に式神へと降り注いだ。
「ギギギギギ……ッ!!」
ただの炎や氷なら再生できる泥人形も、セリスの「浄化の光」の前には無力だった。呪いの媒介となっていた魔素そのものが分解され、光の中に溶けて消えていく。
「……ふぅ。これで、一丁上がりじゃな」
「やりましたね、ユウ様!」
ソフィアがドヤ顔で杖を振り回し、セリスが嬉しそうに駆け寄ってきた。
跡形もなく消え去った巨大式神。
残されたのは、丸焦げになって気絶したままの裏陰陽師たちと、平穏を取り戻した静かな夜の森だけだった。




