第126話: キャンピングカー強襲要塞モード
「なんだありゃ……! キモい塊になりやがった!」
ルナが顔をしかめる。
倒れた裏陰陽師の体から溢れ出した呪符と黒い煙(瘴気)は、周囲の木々や土を巻き込み、全高十メートルを超える巨大な泥人形のような怪物……いや、「合成式神」に変化していた。
そいつの全身からは、ドロドロとした黒い泥(触れるだけで肌が腐る呪いのヘドロ)が滴り落ちている。
『キシャァァァァァァッ!!』
「マズい! あんなのに村に入り込まれたら、せっかく建てた小屋も人も、全部どろどろに溶かされちゃうよ!」
「ワンッ! ガルルルッ!」
ポチが警戒音を鳴らしながら、ミサイルを連射した。
ドガァンッ! と合成式神の腹部で爆発が起きるが、泥のような体はすぐに蠢き、弾け飛んだ部分を再生してしまう。
物理攻撃が効きにくい、最高に厄介なタイプだ。
「おいおい……夜中に騒々しいと思ったら、随分とデカいお客さんが来てるじゃないか」
キャンピングカーの扉が開き、ジャージ姿の僕があくびをしながら出てきた。
実は先ほどのルナとララの戦闘の時点ですでに起きていた(ナビからのアラートで叩き起こされた)のだが、彼女たちがあまりにも余裕で敵を蹴散らすものだから、出るタイミングを見失っていたのだ。
「ユウ! ボケッとしてないで手ぇ貸しな! あいつ、村の中心(温泉)に向かおうとしてる!」
「大丈夫。それも想定内だ」
僕はスマートウォッチの画面を操作し、ナビに命じた。
「ナビ! 新機能のテストだ。『強襲要塞モード』、起動!」
『イエッサー。マスターの承認を確認。キャンピングカー・フォートレスモード、展開を開始します。全搭乗員および指定登録の村人は、直ちに安全圏へ退避してください』
ガキンッ! ゴウンッ!
お馴染みの変形音が夜の村に響く。
だが、今回はただの重機や屋台への可変ではない。
車体の四隅から巨大なアウトリガー(固定脚)が地面に突き刺さり、車体が完全に地面と一体化する。
そしてルーフからは、ポチの武装をそのまま巨大化させたような、二連装の魔力収束砲(非殺傷だが物理的衝撃は特大)がせり出してきた。
「すげぇ……なんだあのメカメカしい姿は……」
騒ぎを聞きつけて起きてきた職人たちが、腰を抜かして見上げている。
しかし、一番凄いのはここからだ。
『大気中の魔素濃度、正常。温泉脈からの地脈エネルギー、接続完了。――物理・魔法複合シールド、展開!』
ピシャァァァァァンッ!!
キャンピングカーを基点として、青白い光のドームが村全体を覆い尽くした。
それは、セリスの「聖女の結界」と、ソフィアの「魔法防壁」を、ナビの演算によって極限まで効率化した、前代未聞の広域防御システムだった。
『――ターゲット、ロックオン』
合成式神が結界を破ろうと巨大な泥の腕を振り下ろした瞬間。
キャンピングカーの屋根から、極太の光の束が放たれた。それは泥人形の右腕を根元から「吹き飛ばす」というより、「物理的な衝撃の壁で粉砕」した。
「ギィイアァァァァッ!?」
合成式神がたたらを踏む。
僕の【マイホーム】は、もはやただの移動式テントではない。
この空間(村)にいる限り、絶対に抜かれることのない「無敵の城」なのだ。




