95/97
雨の廃墟に
雨の廃墟に
静かに流れるのは
雨樋からの水
雨の草原を風がゆく
白い馬の幻を見る
一本の道の後に
晴れでもなく、暗い嵐でもなく
光を透かす雲から降ってくるもの
慈雨、初夏の日差し、透明な風
空の向こうにあるもの
明日への希望、夢へ
静かな廃墟の跡に
あたらしい足跡が重なる
天気雨の午後
緑の木がある光の世界
雨でもない、晴れでもない
風が吹いて
傘越しの景色はどこかへ
つながっていく
未来へ
百年以上、もしかして千年近く
幾年もの記憶が刻まれて
石は朽ちている
わたしもあなたもいない
風の時代から続くもの
夕闇と夜明けを交代させながら
青田に吹き渡る風に
瓦屋根に降り積もる雪に
繰り返していく
記憶は白く積み重なって
やがて古びた石のように
動かない年月となる
白い世界に
ただひとりのあなたがいて
わたしがいた
手を差し出して
受け止めた
笑い合って
並んで歩いた道がある
雨の日には思い出す
あかるい雨の日に出会えた
廃墟の思い出




