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現在情勢新聞記事

8章終了前後での国内・国際情勢に関する新聞記事です。

主人公以外の視点での情勢の変化についてみていきます。


   ◇


【 ケルクフリント3月暴動、終息宣言――勇者の国政府 】


 勇者の国政府は26日に、今月初頭より勃発した同国のケルクフリント州を中心とした暴動は終息したとの声明を発表した。

 この暴動の背後には、同州で政治的影響力が拡大していた政治組織『勇者と労働者の国家党』の党首であるヘンリー・バロウズが煽動していたとされる。同氏は、州警察と軍による鎮圧戦闘において、群衆鎮圧のために発砲された弾丸に倒れた。

 ケルクフリント州で画策された国家党による暴動計画は非常に練られたものであった。勇者の国内部の過激派組織である勇者闘争連盟と連携し、同州の民衆を組織化することに成功。その武装群衆を州庁舎や州議会に突入させヘンリー・バロウズを首班とする臨時政府の樹立を15日に発表した。

 しかし勇者闘争連盟により軟禁されていたはずの州首相が単身逃亡すると州機能は回復。以後、州政府側は州軍と警察を投入し州軍司令部を本部として非常事態宣言を出し、住民の外出を制限し群衆への合流を禁じた。それとともに占領された州庁舎を包囲し膠着状態を作り上げた。

 事態の進展を当初こそ勇者の国政府は沈黙を貫いていたものの、24日に州政府側に立ち国軍の派遣を決定する。その報を聞いた国家党および勇者闘争連盟陣営からの逃亡者が相次ぎ、それを好機と見た州首相は軍と警察に鎮圧を命令。そしてバロウズ氏の死が確認され終息へと至った、というのが本暴動の経緯であるとみられている。

 また国家党の指導者層の多くは逮捕・逃亡の憂き目に遭っており、同党の影響力は大きく減退すると専門家の間ではみられている。


( 東雲毎日民報 3月28日 )



   ◇


【 国際労働者ギルド設立、第1回会議が聖女の国で開かれる 】


 労働者の日とも目される2月1日に国際労働者ギルドと名乗る新たな非政府国際会議が発足した。『ギルド』とは前時代の職業別の組合組織より取られているが、より広範な労働者という枠組みにおける権利向上を目的とした団体であるとしている。

 『世界繊維危機』により世界全体では既に通算で800万人を超える失業者がいる現状、不当な解雇から労働者の生活を守るための権利団体を横断的に団結させる必要があることは世界各国でかねてより謳われていた。その声を受ける形で発足したのが同組織である。

 第1回会議には、各国より合法・非合法問わず多くの組織・団体が参加した。我が国からも第四党に躍進した統一国家党や、過激派組織として知られるガルフィンガング解放戦線などが参加している。

 会議の中では、英雄の国の代表が提唱する『経済セクターごとの独立した産業部門ごとの労働組合を統治の主体とする相互扶助体制による経済運営理論』を信奉する『労働組合主義』と、重戦士の国で近年勃興してきている『武装労働者組織や民兵を主体とした土地・権利の共同所有を前提とした生産・分配体制理論』を信奉する『無政府主義』とが激論を交わした。

 開催国であり同時に議長国となった聖女の国の代表は本会議の閉幕挨拶にて『痛みを伴う革新を断行せねば、我々の権利を防衛することはできない』と結論付け、暴力革命を肯定するかのような発言を残している。


( 大衆日報新聞 2月11日 )



   ◇


【 [社説]世界繊維危機に瀕する各国に一筋の光明か 聖女の国の敏腕県知事の手法に迫る 】


 繊維産業を中心に世界規模での景気減退をみせている昨今であるが、聖女の国の1人の県知事の手腕が着目されようとしている。

 エミディオ・ロベルト。同国内最大の人口を有する都市を抱えるアルバーニレーム県の県知事だ。就任当初から多くの社会福祉事業を独自の側近らとともに計画・実行に移してきた彼は既に同県においては極めて高い評価を得ているとのこと。

 貧困者や病人などの社会的弱者に対する福祉事業に世界繊維危機以前より力を入れて取り組んでいただけではなく、彼はその財源の捻出にも腹案を有していた。

 それは初めてこの県の県知事選挙に立候補して政界への出馬を表明したときの公約である『錬金術の大工場群の誘致』から見て取れるように、それまでの錬金術師としてのキャリアを県の施政に利用することであった。そして2年前にその応用錬金術工場群は完成に至る。

 当初はあまりにも大規模な工場の誘致に懐疑的な声や、住民立ち退きに対する不満の声なども散見されていたが、この工場群だけで雇用規模が5000名前後、更にその工場労働者の生活を支えるために更なる雇用創出の効果が発揮されたことでロベルト氏への見方が変化へと転じる。

 そして世界繊維危機勃発後にも、この工場群は生産を停止することなく稼働を続けたことから同県の失業者は聖女の国の他県平均から見ても著しく低い。稼働が実現したのは、この工場群が生産と同時に最先端の錬金術研究施設であったことに起因している。何故なら魔石装置を始めとする錬金術製品は既に生活必需品であり、景気がどん底にある現在においても一定の需要があることから値崩れが軽微であったこと、そして最新鋭の装置を量産して販売できる強みが生きたからであった。

 ロベルト氏は『世界的な経済恐慌と真っ向から戦う』ことを標榜しており、現在は県知事という立場を活かして前回の魔王侵攻において召集された魔法使い徴兵人員の退役者への年金問題に切り込んでいる。

 一方で、我が国の政府の打ち出す経済対策の1つに魔石装置生産の中小企業推進というものがある。が、その効果を我々は実感するに至っていない現状、この『敏腕県知事』のように大工場を国や行政の単位で作り上げるべきだと筆者は考える。中小企業に慣れぬ魔石装置生産を任せたところで、本当に雇用は創出できるのであろうか。


( 大衆日報新聞 3月5日 社説 )



   ◇


【 魔法使い軍制改革――組織改編の内示 】


 来年度予算案の通過を受けて、魔法使いの軍制組織は一部改編することが決定した。来年度より5年を目途に組織改編を行う予定である。

 主な変更点は以下の通り。


 1.現在隣国『街道の民』にて治安維持活動を行う第6魔法師団を街道駐屯軍に格上げ。それに伴い一部部隊の改称・新設。

 [現行制度]

 第6魔法師団

  〇第6魔法旅団

   ◇第11魔法兵連隊

    ☆第41~第44魔法兵大隊

   ◇第12魔法兵連隊

    ☆第45~第48魔法兵大隊

  〇第2騎兵連隊

   ◇第7~第9騎兵大隊

  〇第6飛竜兵大隊

  〇第6砲兵大隊

  〇第6兵站兵大隊

  〇第6工兵大隊


 [新制度]

 街道駐屯軍(第6魔法師団より改称)

  〇街道駐屯歩兵旅団(改称)

   ◇第11魔法兵連隊

    ☆第41~第44魔法兵大隊

   ◇第12魔法兵連隊

    ☆第45~第48魔法兵大隊

   ◇街道駐屯通信隊(新設)

   ◇街道駐屯憲兵隊(新設)

  〇第1独立混成旅団(新設)

   ◇第2騎兵連隊

    ☆第7~第9騎兵大隊

   ◇第6飛竜兵大隊

   ◇第6砲兵大隊

   ◇第6兵站兵大隊

   ◇第6工兵大隊

   ◇第1対空兵大隊(新設)


 2.第1留守旅団の新設

 [内訳]

 第1留守旅団

  ☆第1~6留守大隊(正式名は第1001~1006魔法兵大隊)

  ☆留守通信隊

 ※旅団本部は王都だが、留守大隊はそれぞれ編成地に大隊本部を置く。


 3.第1魔法師団の第1魔法旅団に、兵員が女性のみの第7~8留守大隊(婦人大隊)を新規編成。(正式名は第1007~1008魔法兵大隊)


 新設された留守部隊は後備部隊・守備隊としての訓練を施し、国土開発事業や災害時の救護活動などに従事する予定。充足率は経済状況などを鑑みて決定する。


( イプシシマス探報4月号 3月25日 )



   ◇


【 経済対策? 癒着? ――魔法使い・錬金術師と政府の灰色の繋がり 】


 政府の提出した来年度予算案は、衆議院と貴族院の両院を通過した。そこに盛り込まれたのは、ランバード・シワード宰相が就任時より度々発言していた積極財政と目される超拡大の予算案であった。

 州兵徴募助成金による雇用創出や、公共事業・鉄道網整備、あるいは中小企業への事業転換推進など様々な対策を盛り込んでいるものの、専門家との間で十分な議論がなされたものであるかは断定できず効果的な施策であるかは疑問符がつくものばかりだ。それ故に政府による人気取り・バラマキ政策の類であると、野党第一党である多元民衆党は批判を強めている。

 だが、それ以上に危惧すべきものが予算案として通されている。魔法使い・錬金術師両軍の常備兵力拡大の為の予算だ。いずれも雇用対策名目とはされているものの、これが実質的な軍拡であることは疑いようもない。特に魔法使いはこの情勢下において昨年より魔法教育の拡大方針も掲げており、政府の『放漫財政』に乗じて我々の血税を掠めるのではないか、という批判も専門家の中では主張する者もいる。

 取材に応じた財務省関係者は「(政府の経済政策は)必要なことであるが、各省庁の最大限の助力が無ければ効果が薄れてしまう」と語っている。


( 日刊森林 3月28日 ※内務省警察局出版発行課の命令で公開差止め )



   ◇


【 紫外線領域の放射総量に関する理論矛盾、解消か ――感覚と反する不可解な仮定の導入 】


 従来の一般錬金術の光学理論として採用されているものの1つに、魔素の影響が介在しない理想空間における完全放射体の有する光の強さは周波数の累乗に比例するという考え方がある。しかし、これは低周波領域においては非常に良い感度を示すものの、高周波になるにつれて光は際限なく強くなっていき、高周波の限界点――すなわち振動数ゼロ状態においては、光が実質的には『無い』のにも関わらず光の強さは無限になるという矛盾を内包した理論であった。

 その矛盾については以前より指摘を受けていたものの、しかしその理由を理論的に説明することのできる研究者はこれまでおらず、現実世界に存在する魔素が何らかの相互作用を引き起こし高周波領域の光を吸収している、大気中には魔素でも従来の粒子でもない別の物質が充填されている、もしくは光はその周波数帯域によって異なる性質を有する、といった仮説が立てられたがいずれも実証には至っていなかった。

 しかし勇者の国学士院に所属する研究者が、『光の強さは離散的に分布する』という仮定を用いて再計算を行えば、すべての周波数帯において観測結果に近い新法則を導き出せることを発表。錬金術学会を震撼とさせた。

 すなわちこの仮定が正しいとするのであれば、光の強さというものは第1段階、第2段階……というように階段状になっていて、たとえば我々が魔石照明の明るさを変える時には、魔力の大きさに比例して明るくなっていたのではなく、魔力がある値まで達すると光は1段階上の明るさに遷移するということになる。

 果たしてそのような感覚と異なる現象を、光が引き起こしているのであろうか。今後の研究結果が待たれる。


( 新報アルカエスト 2月19日 )



   ◇


【 人口3700万人突破 人口増加率は増加傾向、だが…… 】


 内閣統計局は、1日に昨年度人口統計調査の調査結果を発表した。一昨年10月1日時点での人口推計は3702万4862人。人口統計調査は5年おきに行うが前回から170万人程度増加した。増加率としてみると約5.8%で、例年の増加率が5%前後であることを踏まえるとやや増加傾向に転じたとみられる。

 内閣統計局は「街道の民や商業都市国家群などの近隣諸国出身者の増加分ではないか。ただし昨年度集計のため、来年度は(人口増加率は)ここまで伸びないだろう」と語っている。昨年より世界的に発生した『世界繊維危機』の影響が本統計の期間外であるため、内閣は人口増加率は緩やかになるだろうと推計を立てている。


( 国民経済新聞 3月2日 )



   ◇


【 王国大学より難関とされる魔法学院とは? 】


 我が国の最高学府であるガルフィンガング王国大学よりも難関とされるのが魔法教育機関唯一の大学課程である魔法学院だ。同校は、魔法爵育成学院の卒業者かつ現役魔法準男爵爵位保持者のみしか受験資格が無い上に、出身校による優遇措置も存在しない。魔法男爵へ陞爵しょうしゃくすると受験資格が失われる。

 受験するだけでも非常に狭き門であるにも関わらず、受験倍率は例年10倍程度。筆記試験の後に、筆記合格者には各試験科目ごとに面接試験が実施され、のべ20日以上が試験に費やされる。それを通過できねば魔法学院への入学は許されない。

 試験科目は一般共通科目として言語・算術・宗教・社会科の4科目、魔法科目として古典魔法論・魔法制御・魔力回路の3科目、軍事科目として戦闘教義・陣中用務・兵棋演習・野戦築城・交通の5科目の計12科目。

 また入学後は4年間かけて一般教養科目・魔法・軍事などについて学ぶが、その他に錬金術師側の戦術講義も実施される。

 更に魔法教育機関において、魔法学院は魔法教育統括部ではなく魔法幕僚本部の直属であることから、幕僚や師団長としての軍事指揮能力や他国軍との連携能力に関する訓練も行われる。


( 大衆日報新聞 3月13日 )


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― 新着の感想 ―
[一言] 核兵器の存在を必要とする話の次に現代物理学の雛型になる理論を匂わせる記事・・・ 構成がうまいですね
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