第1章 はじまりの刻 3
煉さんと薫さんは境内の奥の一番太い松の木の前で立ち止まる。
「この木はね、三鈷の松と言って特別な松の木なんです」と薫さんは告げる。
「今からやる事を覚えて真似して欲しいんです」
そう言い薫さんは松の木に手をかざす。
「翡翠の地よ、翡翠の加護を受ける者に真の道を開け」
そう告げると薫さんは光に包まれ姿が消えた。
「えぇぇぇぇ!?どうなってるの!?」
「いちいちうるさい奴だな、見といてやるからさっさとやれ 」
眉をしかめながら煉さんは言う。
「うるさいって…こんなのびっくりします!」
なんて人だ。
薫さんと違って優しさを感じられない。
「それに…突然異世界に飛ばされて混乱してるっていうのに、もう少し優しくしてくれたっていいじゃないですか」
「優しくしたら気が済むのか?」
カッチーン
頭にきた。
「ふん!」
私はそう言い松の木に手をかざし言葉を告げようとすると何故か光に取り囲まれ、煉さんが何か言っているが聞こえなくなってしまった。
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気付くと一瞬で大きな屋敷の前に立っていた。
そして辺りは夜になっていた。
「…ここは?」
「翡翠邸、俺達の拠点だ」
そう言いながら煉さんも転移してきた。
「おや、早かったですね」
そう言いながら薫さんが玄関口にもたれて立っていた。
「その事なんだが、こいつ詠唱無しで転移しやがった…」
そう煉さんが告げると薫さんが驚いた顔でこちらを見た。
「まさか…それほどまでとは…」
(…?私、何かやらかしてしまった?)
「とりあえず皆待ってます、中へ」
そう言われ薫さんに続き屋敷へと入っていった。
長い廊下を歩くと広間へと案内された。
そこには3人の男性がいた。
「可愛い嬢ちゃんじゃねーか、俺は鳴橋 迅。よろしくな。」とオレンジ色の髪の長身のガタイの良い男性は頭にぽんと手を乗せた。
白の広袖羽織に金色の麻の葉文様と淡い黄色のグラデーション、黒の立ち襟インナーと多重構造の灰色帯を合わせた装束。灰色から深緑へと移り変わる袴に、黄色の差し色と金具、房飾りに手には槍を持っていた。
「何ナンパしちゃってんだよ、迅」
「ナンパじゃねーよ、雹」
雹と呼ばれる紺色の髪の小柄で中性的な顔立ちの男性がひょこっと現れる。
深紫を基調とした広袖の和装に、黒紫へのグラデーションと金箔風の和柄、牡丹・桜・流水模様を織り込み、深紅の組紐と金の装飾、紫色の番傘が気品とどこか妖艶味を帯びてる。
「僕は時雨 雹。年は君と同じくらいかな…?18歳だよ。気軽に雹って呼んでね、よろしくね。」
そう言い微笑む顔が綺麗で見とれてしまった。
「わ、私は翡山 翠。17歳です!皆さんよろしくお願いします!」そうお辞儀をすると
「土の守護者、土門 陸だ」と栗色の髪の焦茶色の布を何重にも巻いたネックスカーフの男性が名乗った。
ダークブラウンを基調とした忍装束に、生成り色の斜め合わせベストと焦茶色のインナーを重ね、茶革の肩当てや籠手、組紐の帯で武装されている 。ゆったりとした焦茶色の忍袴には控えめな和柄が施されて落ち着きと鍛え上げられた身体にマッチしていた。
「土の守護者…?」
そう問うと、薫さんが口を開く。
「僕たちはそれぞれの属性を持つ守護者なんだ。
煉は火の加護を持つ火神家の火の守護者
迅は雷の加護を持つ鳴橋家の雷の守護者
雹は水の加護を持つ時雨家の水の守護者
陸は土の加護を持つ土門家の土の守護者
そして僕が風の加護をもつ風来家の風の守護者です」
その言葉に皆が頷く。
「守護者というのは衆五者とも表記されていて、巫女を命懸けで守る存在」
「命懸け…?」
「君はここに来る前に黒い影を見たでしょう?
あれは妖気と言って放っておくと妖魔になり得る存在。
妖気が濃くなると人や動物へ健康被害が出たり正気を失ったり操られる人も出てきます。
そして妖魔は人や街を襲ったり自然災害まで引き起こします。
そしてそれらを全て操っているのが邪妖鬼。
それをひとまとめにして僕達は妖と呼んでいます。
それを祓い、浄化するのが巫女の役目です。
僕達守護者は妖の力を抑えたり、退けたりする事が出来ても、完全に祓ったり浄化する事は不可能なんですよ。」
「でも。私やり方が…「大丈夫!そこでこれだよ!」
そう言って雹くんが翡翠の宝玉を手渡してくる。
「これは…?」
「これはね、翡翠玉と言ってその時の巫女の霊力によって使い魔が呼び出されるんだ。
低ランクだと兎や鴉、中ランクだと狛犬、高ランクだと大蛇や鴉天狗が呼び出されるんだ。
歴代にして初代最強の霊力を持つ翡翠姫は妖狐を呼び寄せたって話だよ。」
(そうなんだ…私全然知らなかった。)
「それに、この使い魔で巫女の霊力が測れるんだぜ!
面白いだろ!
…ただ巫女の霊力が強ければ強いほどそれに比例して強い妖も生まれるんだ」と迅さんは複雑そうに笑う。
「可愛い兎だといいなぁ」
と私は笑って見せた。
私自信、自分に特別な力を感じた事は無かったのでうさぎでも鴉でも使い魔さえ呼べる事が出来たら上出来だと思っている。
「それは無理だろう、なんせこいつは詠唱無しで転移できるんだからな」
と煉さんが呟くと皆が目を見開いた。
「…そんな、まさか」
陸さんが慌てる。
すると煉さんは不敵な笑みを浮かばせて私を引き寄せた。
そして私の近くで熱くない白い炎を手の平から灯す。
「なんせ、こいつの目の翡翠色は濁りが一切無く、髪は茜色ときた。」
「翡翠姫と同じ!?」
陸さんが呟くと皆が騒然としだした。
(よく分からないけど、どうやら私が翡翠姫と同じ特徴を持っているので霊力が強いと思われているみたい)
薫さんが咳払いをし
「…とにかくやってみましょう」
そう言い一斉に皆が私を見る
(き、緊張するなぁ…)
そう思いながら翡翠の玉に手をかざし、祈ると玉は光り輝き光の中を見るとそこにはー
可愛らしい兎がいた。




