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虹とロン毛  作者: かいちょ
第5章 虹と2人の神々の物語
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第91話 ナムネと電柱、そしてアシスの苦しみ

イデア界。


虹はいつものように地上を眺めていた。


虹 「ロン毛、今日ははちさんと仲良くなってる。」


虹「なんだか楽しそう。」


その隣で、ナムネは少し安心したように微笑む。


ナムネ 「よかった。」


しかし、そのさらに隣。


調和を司る神アシスは、どこか顔色が悪かった。


虹 「アシス?」


アシス 「大丈夫、少し疲れてるだけ。」


だが、その声には力がなかった。


ナムネは心配そうに俯く。


虹 「ナムネ?」


ナムネ 「……ごめんなさい。」


虹 「え?」


ナムネは震える声で話し始めた。


ナムネ 「ロン毛が自然と話せるようになったの。」


ナムネ「本当は、まだ早かった。」


ナムネ「人間に神の力を与えるなんて、許されないことだった。」


虹は目を丸くする。


虹 「でも、ロン毛は電柱にぶつかって……。」


ナムネ 「違うの。」


「ただの事故じゃない。」


数日前。


ナムネはロン毛の将来を記憶してしまった、失職、そして孤独死する未来。


その姿を見て、ナムネは耐えられなかった。


ナムネ 「お願い、アシス。少しだけ力を貸して。」


アシス 「駄目だ。自然と話す力は、世界の調和そのもの。」


アシス「人に与えれば、世界の均衡が崩れる。」


ナムネ 「でも、あの子が壊れそうなの!」


アシス 「ナムネ。」


ナムネ 「お願い!」


だが、アシスは首を横に振った。


その夜。ナムネは一人でアシスの神殿を訪れた。


そして。眠るアシスから、調和の力をほんの少しだけ借りた。


いや。借りたのではない。無理やり引き出した。


そして。ほんの少しの力を操り。ほんの少しだけ運命をずらした。


その結果。失業通知を見ていたロン毛は、電柱に全力で頭をぶつけた。


偶然のような、小さな奇跡。


そしてアシスが目覚めた時。


ロン毛は自然たちの声を聞けるようになっていた。


話を聞き終えた虹は目を輝かせた。


虹 「じゃあ、ナムネのおかげでロン毛が元気になったんだ!」


しかし。ナムネは泣いていた。


ナムネ 「違う。」


ナムネ「私は……アシスを傷つけた。」


虹は振り返る。


アシスは座り込んでいた。


風の流れが乱れ。


花々は少し元気を失い。


鳥たちも心配そうに集まっている。


風 「アシス、大丈夫?」


アシスは苦しそうに笑った。


アシス 「はは。困ったな。体がうまく動かない。」


虹 「アシス!」


ナムネは泣きながら頭を下げる。


ナムネ 「ごめんなさい!」


ナムネ「私のせい!」


ナムネ「ロン毛という1人間を助けたくて……。」


ナムネ「アシスなら許してくれると思って……。」


長い沈黙。やがて。


アシスは弱々しく笑った。


アシス 「怒ってないよ。」


ナムネ 「え?」


アシス 「君らしい。」


ナムネ「昔から、困ってる人を見ると放っておけない。」


ナムネ「だから好きになったんだ。」


ナムネの涙が止まらない。


ナムネ 「でも……!」


アシス 「ただ。」


アシス「次は相談して。」


アシス「電柱にぶつけるのは、ちょっと痛そうだから。」


虹は思わず吹き出した。


虹 「そこ!?」


だが。


笑った直後。


アシスは激しく咳き込み、その場に倒れた。


虹 「アシス!」


ナムネ 「アシス!!」


アシス「次の春。虹が出る時、君を人間の姿にさせてあげる。ナムネ協力してね。」


ナムネ「当たり前でしょ。」


大粒の涙がアシスに落ちる。


アシス「虹。ロン毛と幸せになるんだ。」


虹「うん。アシスおにーちゃん。頑張るよ」


そうして春。アシスは力を振り絞って虹を人の姿に変えた。


無理しかしていなかった。

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