特別話 こあらと虹 〜とある子供たちの物語〜
春。
まだ小さかった頃。
○○と□□は、同じ幼稚園だった。
毎日一緒だったわけじゃない。
でも、会えばすぐ遊んだ。
ある日。
○○はお休みだった。
□□ 「せんせー。」
先生 「どうしたの?」
□□ 「○○くんは?」
先生 「今日は風邪なんだって。」
□□ 「ふーん。」
先生 「さみしい?」
□□ 「べつに!」
でも。
おやつの時間。
□□ 「○○くんいたら、もっとたのしいのにな。」
小さな声でそう言った。 外は大雨だ。
次の日。
○○ 「おはよー!」
□□ 「おお!」
○○ 「おやすみしてた!」
□□ 「しってる!」
○○ 「ごめん!」
□□ 「いいよ!」
そして二人は、何事もなかったように走っていった。
園庭。
高い棒から滑るのがその時幼稚園での流行りだった。
○○ 「みて!」
□□ 「たかい!」
○○ 「すごいでしょ!」
□□ 「おちるなよ!」
○○ 「へいき!」
その時。
ドスン!
□□ 「うわぁ!」
○○ 「いてて……。」
□□ 「だいじょうぶ!?」
○○ 「からだがいたい。」
□□ 「せんせー!○○くんおちた笑!」
先生 「○○くん!」
○○ 「だいじょうぶ!」
□□ 「だいじょうぶじゃない!」
二人は顔を見合わせて笑った。
秋の遠足。
電車に乗る日。
○○くんの方が電車には詳しかった。
○○ 「でんしゃー!」
□□ 「おおー!」
○○ 「すごーい!」
□□ 「うごいてる!」
○○ 「とうぜん!」
□□ 「まどぎわ!」
○○ 「やったー!」
ガタンゴトン。
ガタンゴトン。
○○ 「あ!」
□□ 「なに!」
○○ 「くるま!」
□□ 「ほんとだ!」
○○ 「あ!」
□□ 「なに!」
○○ 「いぬ!」
□□ 「ほんとだ!」
先生 「静かにねー。」
○○ 「はーい!」
□□ 「はーい!」
でも。
全然静かじゃなかった。
目的地に着いて川沿いをみんなで歩く。
○○ 「あ!」
□□ 「なに!」
○○ 「にじ!」
□□ 「にじだ!」
大きな虹。
二人は立ち止まる。
○○ 「きれー!」
□□ 「でかー!」
○○ 「さわれるかな。」
□□ 「むり!」
○○ 「なんで?」
□□ 「にじだから!」
○○ 「なんで?」
□□ 「しらん!」
○○ 「へへへ!」
□□ 「へへへ!」
二人は空を見上げて笑った。
まだ知らない。
これから先のこと。
2人は別の小学校に行くこと。
大人になること。
また出会うこと。
夢を持つこと。
悲しいこと。
嬉しいこと。
何も知らない。
ただ。
虹がきれいで。
友達と一緒で。
それだけで幸せだった。
あの日。二人が見た虹は、
きっと今も心のどこかにある。
大きくなっても。
違う道を歩いても。
変わってしまうものがあっても。
空を見上げれば、きっと思い出す。
あの日の笑い声を。
あの日の電車を。
あの日の虹を。
一人一人に映る虹がある。
作者ととある人の実話です。
あの日見た景色は一生忘れません。




