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虹とロン毛  作者: かいちょ
第1章 自然との日常
8/69

第8話 森とロン毛

夕方。

誰もいない公園。


ブランコが風に揺れていた。


ロン毛はベンチに座っていた。


ギターケースを足元に置いて。


空を見上げて。


何も考えないようにしていた。


でも。


考えてしまう。

ライブのこと。

仕事のこと。

昔のこと。

未来のこと。


気づけば、ため息ばかりだった。

すると。


風 「ため息、多い。」

ロン毛 「そうか。」

風 「うん。」

ロン毛 「疲れた。」

風 「知ってる。」

ロン毛 「なんで。」

風 「毎日見てるから。」

ロン毛 「そっか。」



しばらく沈黙。

遠くで子供たちの声。

夕焼け。



草「変な男泣いてて草www」


ロン毛の目から涙がこぼれた。

ロン毛 「なんでだろ。」

風 「ん?」

ロン毛 「別にすごく悲しいわけじゃない。」

風 「うん。」

ロン毛 「なのに。」

風 「うん。」

ロン毛 「止まらない。」




風 「泣けばいい。」

ロン毛 「情けない。」

風 「なんで?」

ロン毛 「男だから。」

風 「関係ある?」

ロン毛 「分からん。」



風 「私は風だから分からない。」

ロン毛 「だろうな。」

風 「でも。」

ロン毛 「うん。」

風 「泣きたい時に泣かないと、苦しくない?」



ロン毛 「……。」

風 「泣いてるロン毛も、ロン毛だよ。」

ロン毛 「かっこ悪い。」

風 「かっこ悪くていい。」





ロン毛 「なんで。」






風 「かっこいい人ばっかりだったら、つまらない。」

ロン毛 「変なやつ。」

風 「よく言われる。」



ロン毛は少し笑った。

でも。

涙は止まらなかった。


ロン毛 「悔しい。」

風 「うん。」

ロン毛 「もっと上手くやれると思ってた。」

風 「うん。」

ロン毛 「もっと楽しいと思ってた。」

風 「うん。」







ロン毛 「大人って難しいな。」

風 「子供も難しい。」

ロン毛 「お前、子供だったのか。」

風 「知らない。」

ロン毛 「知らんのかい。」

風 「えへへ。」






夕焼けが赤くなる。

ブランコが揺れる。

すると。

ブランコ 「キー……。」

ロン毛 「なんだ。」

ブランコ 「久しぶり。」

ロン毛 「お前もしゃべるのか。」

ブランコ 「子供の頃、よく乗ってた。」

ロン毛 「そうだっけ。」

ブランコ 「泣きながら来た日もあった。」

ロン毛 「そんなこともあったな。」

ブランコ 「でも。」

ロン毛 「うん。」

ブランコ 「そのたびに、また笑って帰ってた。」





ロン毛 「……。」

風 「だから大丈夫。」

ロン毛 「何が。」

風 「今日泣いても。」

ブランコ 「明日はまた来る。」

ロン毛 「そうかな。」

風 「うん。」

ブランコ 「私はずっとここにいる。」

風 「私はまた吹く。」



ロン毛は涙を拭いた。

ロン毛 「ありがとう。」

風 「どういたしまして。」







ブランコ 「またおいで。」

ロン毛 「泣きに?」

風 「笑いに。」

ブランコ 「どっちでも。」



夕焼けの公園。

誰もいない。

でも。

一人じゃなかった。

ロン毛は立ち上がる。

ギターケースを背負う。

そして小さく笑った。

ロン毛 「よし。」

風 「帰る?」

ロン毛 「うん。」

風 「おかえり。」

ロン毛 「まだ帰ってない。」

風 「えへへ。」

風が優しく吹き抜けた。

公園のブランコが、小さく揺れていた。


ふと公園を見た時、ブランコが揺れていたら、君にエールを送ってるかもしれない。


大人だって公園で遊んでいいじゃん。


そう言える大人になりたい。


大人になっても泥みたいなコーヒーはまだ苦い


そんなもんだ。


味に敏感なのは子供だ、まだ苦いのはまだ子供ってことかもしれない。

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