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虹とロン毛  作者: かいちょ
第1章 自然との日常
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第9話 夏の夕焼けとゲリラライブ

その日の空はオレンジ色に染まり始めていた。


ロン毛はギターケースを背負い、商店街を歩いていた。


特に目的はない。

ただ、夏の夕焼けが綺麗だったから。

すると。

急な階段を下る誰かと目が合った。



ロン毛 「あ。」

女の人 「あれ?」


少し伸びた髪。

優しい笑顔。

懐かしい声。


ロン毛はすぐに気づいた。

ロン毛 「Aちゃん?」

Aちゃん 「○○くん?」



高校の頃。

初めて好きになった人だった。

Aちゃん 「久しぶり!」

ロン毛 「久しぶり。」

Aちゃん 「元気?」

ロン毛 「まあ。」

Aちゃん 「髪伸びたね。」

ロン毛 「お互い。」



二人は笑った。

高校の頃と変わらない。

でも。

少し大人になっていた。



Aちゃん 「ギター続けてるんだ。」

ロン毛 「うん。」

Aちゃん 「すごいなぁ。」

ロン毛 「Aちゃんは?」

Aちゃん 「今は看護師してる!」


俺なんかよりずっと素晴らしい職業についていた。


Aちゃんは少し間を開けてこう言った。


「実はね……結婚するんだ!」











ロン毛 「……。」






一瞬。

時間が止まった気がした。

でも。

不思議と悲しくはなかった。




ロン毛 「そうか。」

Aちゃん 「うん。」

ロン毛 「おめでとう。」

Aちゃん 「ありがとう。」

少し照れくさそうに笑うAちゃん。



昔と変わらない笑顔だった。

夏の夕焼け 「綺麗だね。」

ロン毛 「うん。」

Aちゃん 「え?」

ロン毛 「独り言。」

夏の夕焼け 「ふふっ。」



自然が2人の会話を邪魔する。



Aちゃん 「そういえば。」

ロン毛 「ん?」

Aちゃん 「昔、森谷辰哉ばっかり聴いてたよね。」


ロン毛 「覚えてるのか。」

Aちゃん 「もちろん。」

ロン毛 「懐かしいな。」


Aちゃん 「一曲だけ、聴きたい。」

ロン毛 「今?」


Aちゃん 「今。」

ロン毛 「ここで?」

Aちゃん 「ここで。」


公園の向こうにかすかに見える太平洋。

オレンジ色にそまっていた。


ロン毛 「恥ずかしいな。」

Aちゃん 「最後のお願い。」

ロン毛は笑った。



ロン毛 「最後って笑」


Aちゃん 「結婚しちゃうし。」

ロン毛 「そうだな。」

木々の音

風の音。


ロン毛はギターを取り出した。


ロン毛 「下手だぞ。」


Aちゃん 「知ってる。」


ロン毛 「失礼だな。」


Aちゃん 「ふふっ。」



ロン毛は静かに弦を鳴らした。





『明明後日の太陽はどこへ』




高校の頃。

初恋の君を思いながら聴いていた曲。

失恋した夜も。

嬉しかった日も。




何度も支えてくれた曲。

夕焼けの中。

ロン毛はゆっくり歌った。



夏の夕焼け 「素敵な歌詞だね。」

風 「うん。」


演奏が終わる。

しばらく沈黙。

そして。


Aちゃん 「変わらないね。」

ロン毛 「そうか?」

Aちゃん 「うん。」

ロン毛 「Aちゃんは変わった。」

Aちゃん 「大人になった?」

ロン毛 「幸せそう。」

Aちゃん 「うん。」

ロン毛 「よかった。」

Aちゃん 「ありがとう。」



駅前。

別れの時間。



Aちゃん 「じゃあね。」

ロン毛 「おう。」

Aちゃん 「結婚式には呼ばないよ。」

ロン毛 「なんで。」

Aちゃん 「泣きそうだから。」

ロン毛 「泣かん。」

Aちゃん 「嘘。」

ロン毛 「ばれたか。」

二人は笑った。

Aちゃん 「元気でね。」

ロン毛 「そっちも。」

Aちゃん 「バイバイ。」

ロン毛 「またな。」



Aちゃんは人混みの中へ消えていった。

一人になった帰り道。

空が暗くなる。



風 「来る。」


ロン毛 「ん?」


風 「急いで。」


次の瞬間。


ザーッ!!

突然の大雨。

ゲリラ雷雨だった。



ロン毛 「うわ!」

雷 「ゴロゴロ!」

風 「走れー!」


ロン毛 「なんで今日なんだよ!」

雨 「ごめん!」



ロン毛は笑っていた。

びしょ濡れになりながら。

空を見上げる。



ロン毛 「ありがとう。」




雨 「誰に?」





ロン毛 「昔の俺。」



ロン毛 「ギター好きでよかったよ。」




ロン毛 「今でも大事だ。」





ロン毛 「でも。」







ロン毛は笑った。

ロン毛 「きっと虹がでるよ」



雷 「ゴロゴロ!」

雨 「怖い!」

風 「雷うるさい!」



ロン毛はギターケースを抱えながら走った。



泣いているのか。雨で濡れているのか。


笑っているのか。

自分でも分からなかった。



でも。

夏の雨の向こうにある明明後日の太陽を、

少しだけ信じてみようと思った。

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