第82話 ごめん
約束の丘。夕暮れの空には、静かに七色の光が揺れていた。
姿は見えない。それでも、二人の声だけが優しく重なっていく。
しばらく昔の話をして笑い合った後、虹が急に静かになった。
ロン毛「どうした?」
虹「ねぇ。覚えてる?最後に喧嘩した日のこと。」
ロン毛は少し俯いた。
もちろん覚えていた。
あの日、二人は些細なことで言い合いになった。
虹は怒り、ロン毛も意地を張った。
最後には、「もう知らない。」
そんな言葉を残して、虹は去っていった。
そして、二人はそのまま離れ離れになった。
ロン毛「……悪かった、あの時、俺。お前のこと何も分かってなかった。ごめん。」
虹「違うの、謝るのは私。」
虹「私、怖かったの。」
ロン毛「怖かった?」
虹「うん。」
虹「いつか離れちゃうんじゃないかって。」
虹「ロン毛がどこかへ行っちゃうんじゃないかって。」
虹「嫌いになったからじゃない。」
虹「離れたくなかったから。」
ロン毛は目を閉じた。あの日の虹の涙。
震える声。本当は、寂しかっただけだった。
不安だっただけだった。それなのに、自分は何も気づけなかった。
ロン毛「ごめん。俺、バカだった。」
ロン毛「お前が泣いてることも気づかなかった。」
虹「ううん。私も意地張っちゃった。」
虹「もっと素直になればよかった。」
虹「もっといっぱい笑えばよかった。」
虹「もっと一緒にいたかった。」
声が震えていた。ロン毛の瞳からも涙がこぼれる。
ロン毛「俺も。もっと話したかった。」
ロン毛「もっと一緒に笑いたかった。」
ロン毛「もっと……お前のそばにいたかった。」
風が吹く。
草原の花たちが揺れる。
まるで、二人を優しく見守るように。
虹「ねぇ。まだ間に合うかな。」
ロン毛「当たり前だろ。俺たち、また会えたんだ。だから今度は後悔しない。」
虹「うん……。」
虹の声は泣いていた。
ロン毛も泣いていた。
姿は見えない。
触れることもできない。
それでも、雲の向こうと約束の丘で、
二人は同じ涙を流していた。
長い時間を経て、ようやく言えた。
『ごめん』と
そして、七色の光は、まるで安心したように、
夕暮れの空で静かに輝いていた。




