第77話 君の笑顔
アシスの家の庭。
白い花畑の向こう。
夕暮れの空は少しずつ色を失っていた。
アシス「本当にやるの?」
ロン毛「ああ。」
ナムネ「届く保証なんてない。」
ロン毛「いい。」
ロン毛「やらないで後悔する方が嫌だ。」
風「歌ってあげる!」
木々「揺らして盛り上げるよ!」
花「見てる!」
アシスは優しく笑った。
アシス「ふふ。」
アシス「みんな集まってきた。」
気がつけば。
庭には風。木々。花。鳥たち。
そして。忘れられた歌、メロディもいた。
メロディ「久しぶり。」
ロン毛「手伝ってくれ。」
メロディ「もちろん。」
ナムネ「変な人。」
アシス「でも。」
アシス「好き。」
ロン毛は光のギターを構える。
目を閉じる。思い浮かぶのは。
団子を食べて笑う虹。花見の日。
夕焼けの散歩。喧嘩した雨の日。
そして。最後に見た涙の笑顔。
ロン毛「届いてくれ!」
ギターが鳴る。
『曇』。
目白蓮の大切な曲。
風が音を運ぶ。
風「届け!」
木々「届け!」
花「届け!」
メロディ「忘れない!」
アシス「虹!」
ナムネ「聞こえてるでしょ!」
空へ。
遠くへ。
どこまでも。
優しい音色が響いていく。
すると。
夜空に、七色の光が現れた。
風「!」
アシス「来た!」
ロン毛「虹!」
七色の光は。
確かにそこにあった。
懐かしくて優しい。
あの日と同じ光。
しかし、届かない。あと少し。
本当にあと少しなのに。
七色の光は弱く揺れ。
そして。静かに消えていった。
ロン毛「……。」
最後の音が止まる。
誰も言葉を出せない。
静寂。
アシス「……。」
ナムネ「……。」
ロン毛は立ち尽くしていた。
そして。ギターを抱きしめる。
ロン毛「なんでだよ。」
ロン毛「あと少しだったのに。」
ロン毛「届いてたじゃねぇか。」
ロン毛「なんで。」
ロン毛「なんでだよ……。」
膝をつく。
そして初めて子供のように泣いた。
ロン毛「会いてぇよ……。」
ロン毛「ごめんって言いたいんだよ……。」
ロン毛「好きだって。」
ロン毛「まだ言えてねぇんだよ……。」
涙が地面に落ちる。
風も静かに吹いていた。
その時。
ぽたり。
一滴の雫が。
ロン毛の涙の隣に落ちた。
ロン毛「?」
雨ではない。
見上げる。
誰もいない。
消えたはずの七色の光の中から。
泣きそうな声が。
ほんの一瞬だけ聞こえた。
???「私も……。」
???「会いたいよ。」
白い花が優しく揺れた。




