第74話 世界の歪み
白い花に囲まれた家。
静かな夜。
アシスは窓の外を眺めていた。
ゴホッ。
小さく咳をする。
ロン毛「無理するな。」
アシス「大丈夫。」
アシス「話さなきゃいけないことがあるから。」
ロン毛「……。」
アシス「虹が居なくなった理由。」
ロン毛「!」
アシス「君を嫌いになったからじゃない、君を守るため。」
ロン毛「守る?」
アシスは少し寂しそうに笑った。
アシス「虹はね、ずっと孤独だった。」
アシス「空にいても誰にも見えない、誰とも話せない。」
アシス「でも、君を見つけた。」
アシス「それから毎日、ロン毛と会いたい。」
アシス「話したい、友達になりたい。」
アシス「好きになってもらいたい。」
アシス「そう願ってた。」
ロン毛「……。」
アシス「だから、私とナムネで。」
アシス「少しだけ、世界の法則を曲げた。」
ロン毛「法則?」
アシス「季節。」
アシス「記憶。」
アシス「時間。」
アシス「運命。」
アシス「奇跡。」
ロン毛「?」
アシス「君が自然と話せるようになって。」
アシス「失われた記憶に出会えるようにした。」
アシス「人と人が再会できるようにした。」
アシス「本当なら起きない奇跡も。」
アシス「素敵な人達との出会いも。」
アシス「たくさん起こした。」
アシス「でも、無理しすぎちゃった。」
アシスは自分の透けた手を見る。
アシス「気づいたら、イデア界そのものが壊れ始めてた。」
ロン毛「……。」
アシス「ナムネも、虹も、みんな知ってた。」
ロン毛「じゃあ、虹がいなくなったのは。」
アシス「うん、君を守るため。」
アシス「これ以上、君が崩壊に巻き込まれないように。」
アシスは微笑む。
しかしその身体は胸元まで透け始めていた。
ロン毛「お前も。」
アシス「時間がないみたい。」
アシス「ふふ。」
ロン毛「笑うなよ。」
アシス「だって。」
アシス「君がここまで来てくれたから、本当に嬉しいんだ。」
窓の外。
夜空に亀裂のような光が走る。
花びらが空へ消えていく。
風「世界が、泣いてる。」
アシス「まだ終わってない。」
アシス「虹も、まだ消えてない。」
ロン毛「!」
アシス「だから、助けて、私じゃなくて。」
アシス「虹を。」
ロン毛は強く頷いた。
ロン毛「ああ、絶対、会いに行く。」
ロン毛「今度こそ、ちゃんと好きって言う。」
アシスは安心したように微笑んだ。
アシス「虹、君の願い、もう少しで叶うよ。」
そして。
部屋の奥から。
静かな足音が聞こえた。
???「……。」
ロン毛「!」
誰かが来る。
懐かしい気配とともに




